カカイル2
□愛の真中、恋の下
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愛の真中、恋の下
〜 nartic boy 3,000hits 〜 任務受付カウンターに座って書類を処理しながら、うみのイルカは企んでいた。
ある上忍がイルカに対してなにやら良からぬ感情を抱いている、らしい。
はっきり、そうと言われたわけでもない。
だが、それは誰の目にも明らかだ。
ちょうど任務報告書を提出にやってきた者へ労いの言葉を掛けて、受け取った書類の不備をチェックする。
問題がないと確認できれば、彼の任務は完了だ。
あとはこちら──事務方の仕事となる。
「はい、受領いたしました。任務完了です」
そう告げれば、誰も彼も安堵したような表情なり気配なりを見せるものだ。
時に命がけともなる仕事が無事に終わったのだから。
けれど、イルカに思うところがあると思われるその上忍だけは、違っていた。
もじもじと何か言いかけた後黙り込み、明らかに落胆した様子で踵を返し、ふらふらと去っていく。
その様を思い浮かべ、イルカは何人かの教え子たちの姿とだぶらせていた。
好きな子を前にした教え子たちと、だ。
───……ありえねえ……よなあ……
想像した途端に、即、自分で否定はした。
何故ならば、その人は木ノ葉隠れの里屈指の上忍、はたけカカシだった。
猫背でほてほてと歩きながら18禁小説を読み、額当てと口布で顔を隠して四半分しか見せない怪しい風貌。
そのうえ、唯一見えている右目は眠そうな半目か、人が悪そうな三日月でしかない胡散臭すぎる男。
けれど6歳で中忍に昇格してから20年もの間、戦線を渡り歩いてきた歴戦の勇者であり、エリート中のエリート。
うちは一族に伝わる血継限界、写輪眼を血族でないのに持ち、“コピー忍者”やら“写輪眼のカカシ”という通り名が他国にまで知れ渡っている忍だ。
中忍でアカデミー教師のイルカとの接点は、うずまきナルトという生徒と、こうして報告書の受け渡しをする受付所ぐらい。
あとは通りすがりに挨拶や会話をする程度。
どう考えても、特別な感情を抱かれるようなことはない……ハズなのだ。
「イルカ先生、これお願いします」
「はい、お預かりします」
なんの気配もさせずに目の前に現れ、報告書を提出するその人にもイルカは普段どおりに対応した。
けれど、背後の同僚たちは動揺を隠し切れずに書類をばらまいたり、椅子を蹴倒したりしている。
そんないつにない受付所の緊張を察したのか、噂の張本人はじっと見つめていたイルカから顔をあげたようだ。
「カカシさん」
けれどイルカが名を呼べば、空気を鳴らせる速さで直立不動となって即座に答えが返る。
「はいっ、なんでありますか? イルカせんせえっ」
「こちら、任務開始時間の記入が抜けていますよ」
まるで上官に対するかのような物言いを訝しげに思いながら、イルカは記入漏れのある報告書とペンを差し出した。
「お手数ですがここで書き加えていただけますか?」
「はいっ! もちろんでありますっ」
目の前に無防備に晒されたつむじの行方の分からない白銀の頭髪を眺めながら、イルカは考える。
write by kaeruco。
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