カカイル2
□ミイラ取り
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ちゃんと聞いてくださいと言われたところで、笑いが収まるはずもない。
けれど腹を抱えて屈みこむと背中が痛むのか中途半端な姿勢で、ちょっと待てというように片手の平を見せた。
「ひてて、き、傷開きます、勘弁してください」
目に涙まで浮かべるほど笑っている相手に何を言っても無駄だと思ったのか、カカシは数歩下がって笑いが収まるのを待つ。
「はははっ。何を言い出すかと思ったら。一体、なんなんです?」
ひとしきり笑い、まだ息を乱しながらもイルカが問い直してくる頃には、カカシも冷静さを取り戻していた。
「ま、オレが言いたいのはデスね。アナタがナルトの食生活に与えていた影響についてなんですよ」
どうやらアナタの他に面倒を見てやるような大人はいなかったようですからねえ。
「それで、アナタがナルトとラーメン食いに行く頻度は?」
「月に1度、あるかないかでしょうか」
「そうですか」
ところで───。
「食事は忍びの基本ってご存知ですよね?」
仮にもアカデミー教師という立場なんだし。
「特にアイツなんかまだ子供で、これから体が大きくなる大事な時期ってこともわかってますよね?」
「ええ、勿論」
「だったら、アレはないでしょ! アレはっ」
びしりと人の鼻先を指し示し、とくとくと語り始めるカカシ曰く。
3代目火影に案内されたナルトの部屋でみた冷蔵庫の中身は殆ど空っぽだったとか。
食料と言えるようなものは、箱いっぱいに買溜めされたカップラーメンだけであったとか。
朝食のパンと牛乳がテーブルに出しっぱなしだったとか。
あまつさえ、その牛乳は消費期限がずいぶんと過ぎていたとか。
「もしかして、アレは、そのまんま、アナタの食生活なんでしょーかっ?」
「いや、流石に賞味期限が相当過ぎた牛乳なんてものは……」
困った時のクセなのか、イルカが頬を走る傷を掻きだした。
どうやらナルトほどではないものの、大差のない食生活を送っているらしい。
「相当って……。まさか、ちょっと過ぎたくらいのは?」
「飲みますよ」
だって、賞味期限はおいしく感じる期限であって、食すに適さない期限ではないですよね。
「牛乳は生鮮食品で、表示されているのは消費期限ですよ」
ついでに、未開封の状態で、ですからね。
「分かってますよ。でも、勿体無いじゃないですか」
「………」
まだ食べられるモノを勿体無いと感じる気持ちはカカシにだって分かる。
だが今、問題にしている事とは論点が違うのではないだろうか。
消費期限は突然知らされるものではなく最初から表示されている。
それを目安に飲みきるようにするものではないのか。
第一、ナルトもイルカも、カカシのように突然呼び出されて、任務で何日も戻ってこれないなんてことはまだないのだし。
「……このイルカ先生にして、あのナルトありってことね……」
しばし耐えるように拳を握り締めて俯いて顔を上げると、真っ直ぐにイルカを見据えて告げる。
「何事も、根本から正さないと意味がありません」
「はい?」
「ナルトのためにも、オレはアナタの食習慣から改善しますよっ」
「ええっ!? い、いきなり何言ってんですかっ? ちょっと、カカシさん?」
何故かカカシには、このダメっ子
父子師弟を自分がなんとかしてやらなければ、という老婆心が芽生えていた。
「イルカ先生のお宅はこちらですかー」
「そうですけどっ。でも、困ります。ってゆーか、なんで、いきなりそんな話になってるんですかっ」
write by kaeruco。
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