カカイル2

□ミイラ取り
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ミイラ取り

 2



「カカシさんは帰られたほうがよろしいですよ」

 がらりと雰囲気の違うイルカへ問い返すカカシの声も真剣なものに変わっていた。

「どういうことです?」

「里のため、ということにしておきましょうか」

 今、あなたがいなくなるのは得策ではありませんし。

 さらりと言われた言葉に、カカシは不機嫌を隠さずに返す。

「オレが足手まといになるとでも?」

「いいえ。まさか」

 真意の読めない、静かな表情でイルカは微笑み返す。

「でも、共犯にも被害者にも、なりたくはないでしょう?」

「なるほど」

 しかし、その理論で言うと。

「アナタにとってはオレが邪魔みたいですね」

「まあ、そういうことになりますね」

「なめてんのか、アンタ」

「とんでもない」

 互いに譲らず、火花散るような視線が平行線を描く。

 だが、沈黙は長く続かなかった。

「ま、いいデショ」
 
 折れたような素振りを見せておきながら、カカシが押し切った。

「足手まといかどーか、その目で見てもらおうじゃないの」

 へらりと笑って言い切る。

 だが、これから自分たちがなそうとしていることを本当に理解しているのか、イルカには判断できなかった。

 待ち構えているのは、話して分かる相手ではない。
 けれど、無闇に傷つけていい者でもない。

 下手をすれば、カカシの経歴に傷をつけるどころか、2人まとめて存在を消されかねない。

 そうなれば、ナルトたちを担当する教官が入れ替わることになる。
 代わりの者がナルトやサスケをカカシ以上に正しく教え導けるか、それ以前に下忍として認めるかも分からない。

 イルカは当然、今はカカシも避けたい事態だ。

「ですが」

 イルカが言い縋ろうとするのを制し、ひそやかな声でカカシは語る。

「オレもね、ナルトのことは気に入ってんです」

 思っても見なかった言葉に、イルカは目を丸くして見返した。

「アイツ、面白いですよ。何しろこのオレが認めちゃったんですからね。だから、ま、こっちも引き継ぎましょ」

 お互い、あんな連中にかまってる暇もありませんし。
 
「暇、ですか?」

「ええ。まずはアナタの食生活の改善しなきゃですし」

「そうですか」

 真面目くさって宣言するカカシに、イルカはくすりと笑いをもらす。

 その見た目ばかりは柔らかな笑みに、カカシはわざとらしく凶悪な微笑を返した。

「ま、先生にはしっかりとオレの実力を見てもらいましょうかね」


 * * * * *


 まだ夜更けではない、遅い夕飯時という時刻。
 住宅街は意外と人目がなかった。

 だが、わずかな街灯と家々から漏れる明かりの他はない薄暗い路地には、いくつかの人影がわだかまっている。

 彼らの視線の先は明かりに照らされた路地へ入り込む道。
 先程まで確実に近付いていた気配が、消えてしまったことに動揺している。

 このまま待つか、それとも今日は諦めるのか、密談を始めようとした彼らの背後から声が掛かる。

「コンバンワ」

 とっさに振り向くと、1人の忍が背を丸めてぼうっと突っ立っていた。

 こんな時に。
 邪魔をするな。

 場の空気を読まない行動に恫喝しかけた声が、咽喉元で凍りつく。

「なんか用?」
 
 
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