カカイル2
□ひとり
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そして、先行部隊が見つけた部下たちよりイルカ1人へ注意が向く。
「木ノ葉の中忍が1人で何をするつもりだ」
イルカ1人を取り囲み、勝ち誇ったようににじりよる忍びの数は7人。
思惑通りだ。
「こうするつもりさ」
クナイを構えた手の隙間から落とした閃光玉が弾けた。
* * * * * 木ノ葉崩しで多くの忍びそして3代目火影を失ってからも、木ノ葉隠れの里は対外的には変わらずにあった。
依頼には応え、充分な実力をもった忍びを配し、里が顕在であることを知らしめるために。
だが、その為に内部は大きく変わらざるを得なくなっていた。
子供たちにとっては忍者アカデミーが休講となり、親や先生たちがこれまで以上に任務で里をあけるようになった。
忍びにとっては、適していると判断されれば階級に関係なく、高ランクの任務が与えられる。
これまで里内で教育や事務に携わっていた者までが任務に借り出されていた。
その影響で簡単な決済や書類がどんどん滞り、新たに5代目火影に就任した綱手の尽力にも関わらず、里内の機能はゆっくりと確実に麻痺しつつある。
「はーぁ〜」
里長、火影の執務室に足を踏み入れた者は、誰もがため息をもらす。
それは感嘆であり、感服であろう。
充分な広さを持つはずの部屋が堆く積まれた書類に埋め尽くされているのだから。
「いや、お見事です。綱手さま」
「それは嫌味かい? カカシ?」
「いえいえ、とんでもない」
本当に感心してるんですよ。
「よくこれだけ書類積み上げたなあって」
「それを嫌味っていうんだよっ、クソガキッ」
忌々しげに判を叩きつけ、僅かな決済済みの山へ書類を放る。
「……しかしまあ」
悪態をつきながらも休むことなく書類に目を通してゆく綱手の手際に感心しながらも、カカシの口は辛辣だった。
「そろそろ任務に出てる忍びを一度整理したほうがよくないですか? このままじゃ、里が未決済の書類で埋まっちまいますよ」
「そのつもりなんだが、まだ誰がどこの担当かイマイチ把握してなくてな。かと言って、また適当に事務につけたりしたらこれ以上混乱しかねないし」
こうなったのは、適当に任務に借り出してたからだったのかと、里が誇る上忍が一抹の不安を抱いたことも知らず、5代目は続ける。
「お前、誰か知らないか? 3代目の元で事務関係の補佐してた奴。うちのシズネみたいにさ」
綱手が処理していく書類の合間に任務報告書を差し挟み、カカシは迷うこともなくある人の名をあげた。
「それだったら、イルカ先生を推しますよ、オレは」
「イルカか」
「ええ。3代目にも可愛がられてましたし。アカデミーの教師だけでなく受付もやってました」
綱手が顔をあげると、何故かカカシが柔らかく笑っていた。
その理由が思い当たらずに首を傾げかけたものの、すぐに綱手は火影としての職務に戻る。
「うん、考えておこう。それでだな……」
「オレには任務って訳ですか……」
差し出された任務依頼書に目を通し、カカシはため息をこぼす。
「もう少しうまく使ってくださいよ。こんな酷使されたら、オレなんかすーぐヘタばっちゃいますよ」
「ちゃーんと約束した日には帰れるようなのだろ」
「……上手くいったら、デショ?」
write by kaeruco。
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