カカイル2

□ひとり
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 情けない声をだし、恨みがましく綱手を見下ろしながらも、既にカカシの頭ではこの任務へのシュミレーションが始まっていた。

 無論、綱手はそのことを承知している。

「それさえ終わればちゃんと休みをやるよ、1日オマケしてな。里としてもお前に倒れられたら困るのは事実だ」

「そりゃ、ドーモ」

 しっかりと目を通した依頼書を返し、辞そうとしたカカシをふいに綱手が呼び止める。

「なあ、カカシ。なんでその日なんだ? 特になにかあったとも思えないが……」

 殆ど書類で隠れてしまった壁の暦に目をやりながら、綱手は過去を振り返っていた。

 彼女の知る限り、カカシがこの日に任務をしたくないか、里にいたくなるような出来事は起っていない。

 この忙しい時期にわざわざ休みを取りたい理由があるのかという野次馬根性も確かにある。

 けれどそれ以上に、存外ナイーブなカカシにまた、自分が里を空けている間に何かあったのかと案じているのだ。

「……そんなんじゃありませんよ」

 だが、綱手の心配は杞憂だと言わんばかりに、またカカシは穏やかに微笑んでいる。

「大事な日、なんですよ。オレにとってね」
 
 大切な日だと言い切る表情が心底幸せそうだった。

 今まで見たこともないカカシの顔つきに一瞬あっけに取られたものの、綱手は満足そうに頷く。

「……そうか」

「では、行って参ります。戻ったら、約束通りにお休みいただきますからね」

 言うだけ言って、カカシは姿を消した。

 瞬身の術を使ったはずだが、執務室中に山と積まれた書類はひらりともしない。
 あまりに見事に術の冴えに感心しながらも、綱手はどこかくすぐったそうに微笑む。

「あの小僧にも、そんな人がねえ……」

 アタシも歳取るハズだわ。

 そう一人ごちた途端、執務室の外から緊急を告げるシズネの声が響いた。

 
【続く】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2006/05/11
UP DATE:2006/05/26(PC)
   2009/11/15(mobile)
 
 
ひとり

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