カカイル2
□ひとり
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その動きに気づいても払う腕も、避ける足も、間に合わないと悟る。
これまでかと、諦めそうになった。
その刹那。
「イルカ先生っ!」
耳に飛び込んできた声が誰のものだったか認識するより先に、イルカの身体は動いていた。
* * * * * カカシの声に反応するように、イルカの体が動いた。
左から突き入れられる刃を僅かに交わし、腕を掴んで引く。
敵の身体を盾に使いながら、背後に忍び寄っていた敵へ体を預けるように右上から降ってくるクナイを避ける。
その勢いのまま反転して立ち上がった時には、手にしたクナイで敵の咽喉笛を掻き切っていた。
イルカの動きに、無駄はない。
きっと、考えての動きではなかったのだろう。
立ち上がった瞬間に我に返ったイルカは呆然としている。
彼の周囲にいた部下も、そしてカカシもイルカの動きには驚き、魅入られた。
しかし、この場にいた誰もが彼の動きに魅入っていたわけではない。
畳み掛けるように、3人の敵が地を蹴って木ノ葉の忍びに迫る。
だが、その動きに気づいてからでも仕掛けられるスピードを持った者がここにはいた。
《影分身の術》
すばやく印を組むと3体の影分身が敵の前に立ちはだかる。
「新手かっ!」
「待てっ、こいつはっ」
部隊長の指示を無視して突っ込んでくる若い忍びは影分身に軽くあしらわれ、転がされた。
怯まず、果敢に立ち上がろうとする咽喉元へ別の分身がクナイを突きつける。
「どうする? 引いて生き延びるか、それとも……」
背後に立つ本体が冷たく言い放った。
「ここで死ぬか」
誰の一言だったか。
「写輪眼の、カカシ……」
その言葉が──名が、ざわりと場の空気を凍りつかせる。
木ノ葉隠れの里の上忍、はたけカカシ。
彼の名と実力は忍びの世界では広く知られていた。
左眼の写輪眼と共に。
「どうする?」
カカシは微動だにせず、静かな声で問う。
沈黙は長かったが結局、敵は折れるしかなかった。
僅かになってしまった部下をまとめ、去っていく。
同時に、カカシも影分身を解いた。
助けられた中忍たちは彼らの背後をつくように動きかけたが、カカシはそれを制して言う。
「やめとけ。見逃してもらったろ?」
それよりも、と自分の来たほうを見やる。
「あっちで倒れてるの、助けにいってやんなさいよ」
「は、はいっ」
「あの、隊長を、お願いします」
「ああ」
隊長を上忍へ託し、慌てて去っていく中忍2人が見えなくなったところで、カカシはようやくイルカへ近付いた。
あまり深くはないが全身に細かい傷を負い、未だクナイを握ったままの右腕から右頬には返り血が飛んでいる。
呼吸は少し荒いし、なにより両眼を覆う包帯が痛々しい。
「イルカ先生ぇ」
先程までの冴え冴えとした声とは別人のような口調でカカシは肩を落とす。
「無茶、しないでよー」
「……カカシさん? なんで、ここに?」
声のするほうへ伸ばされたイルカの両手を取り──右手に握ったままだったクナイは取り上げ、カカシも両手でしっかりと握った。
「オレ、任務に行く途中だったんですが、放置されてる中忍君見つけましてね。ま、放って置けなかったんで」
「じゃあ、コナラは無事なんですね」
「ええ。まさか、イルカ先生がいるなんて思わなかったケド……」
しかも、こんなことになってるなんてね。
write by kaeruco。
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