カカイル2
□ひとり
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「え?」
腕を辿るように上がったカカシの手がイルカの頬に触れ、指がそっと両目を覆う布を撫でる。
ことさら丁寧なのは、荒くざらついた布の感触の向こうがどうなっているのか、確かめるのが恐ろしいからかもしれない。
「心配、ないですよ。閃光玉炸裂させた時、近すぎて……」
イルカの声が明るいのはカカシを安心させるためだろう。
なんでもないドジだと思わせたいのかもしれない。
けれど、カカシは余計に辛い。
「時間が経てば見えるようになるんですけど、ほら、中途半端に見えると逆に危ないでしょう? だからっ……」
これ以上、何も言わせたくなくて、強く抱きしめた。
「カカシさんっ、あの、ほら、任務中ですよっ、オレたちっ」
慌てて突き放そうとする腕にも怯まず、カカシは抱きしめる力を強くする。
そして、イルカの肩口に顔を埋め、ぼつりと恨みがましい声を出す。
「イルカ先生なんか、嫌いですっ」
「はあ? 何言ってんです、アンタは」
抱きしめたまま突然、自分を嫌いだと言い出す不可解なカカシに、やや乱暴にイルカは聞き返す。
「自分を大事にしてくれないイルカ先生が、大っ嫌いですっ」
カカシの行動も言うことも、まるで駄々をこねる子供だ。
だが、イルカにだってカカシの気持ちが分かる。
「大丈夫ですよ。アンタ置いていったりしません」
開いた手でそっとカカシを抱き返し、静かに言い聞かせる。
「アンタ置いていったりしません」
さっきだって、アンタの声聞いた途端に気合入ったじゃないですか。
苦笑交じりに言うイルカへ、カカシは尚も食って掛かる。
「そうですけどっ」
けれど、不意に上げた顔──口布に覆われた頬へ、柔らかくイルカの唇が寄せられる。
「オレにとって、カカシさんはたった1人の大事な人ですからね」
だから、何があってもオレはアナタのところへ帰るつもりで戦ってました。
【了】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
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WRITE:2006/05/24
UP DATE:2006/05/26(PC)
2009/11/15(mobile)