カカイル2

□カムフラージュ
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カムフラージュ
〜 camouflage 〜

にわか雨 = iscreamman 相互リクエスト



 日が傾いて空が夕焼けに染まり始めた頃、火の点った提灯にぼんやりと照らされた神社へ続く参道には様々な出店が並び、威勢の良い客引きの声と香ばしく甘い匂いに引き寄せられるよう、涼しげで華やかな夏の装いで着飾った人々が集まって来る。
 そんな賑わいから外れた小さな鳥居の脇に建つ常夜灯の下、3人の子供が額を寄せ合っていた。

「……どういうことだ?」

 訝しげに、握った紙片を睨むサスケ。
 彼の右からサクラが、左隣からナルトが覗き込む。

 記されているのは、忍文字───隠れ里や流派毎に独自に使われている暗号だ。

 文末にはさらりと『へのへのもへじ』が書かれているから、彼らの担当上忍の筆で間違いない。

「……まさか……」

 サクラは朧気ながら意図に気付いたようだが、どこかまだ半信半疑でいる。
 アカデミーではオチコボレ、ドベと言われ続けていたナルトにも読める、初歩的な暗号で指示された内容。

「なあ、これってば演習なんだよな?」

 暮れゆく空のした、賑わいを増す夜祭りをよそに、下忍たちは悩むばかりであった。


 * * * * *


 話は昨日に遡る。

 早朝から農家で野菜収穫の手伝いという果たして忍者が請け負うべき仕事か甚だ疑問のあるDランク任務を終えた帰り道。
 朝が早かった分まだ日が高いうちに里へ戻り、いざ解散という段になって突然カカシがこう告げたのだ。

「明日は夏の特別演習をやるぞー。全員、装備を整えて、昼に大門前に集合」

 だから今日は張り切って───けれど、どうせまた長時間待たされるだろうと覚悟して臨んだのだ。

 だが予想を裏切ってほぼ時間通りに現れたカカシは、がっつり演習装備で揃った部下たちを一瞥して心の底から残念だと言わんばかりの溜め息を吐きやがったのだ。
 そして不機嫌なまま、なんの説明もなく、行くぞと号令だけして1人さっさと歩き出す。
 
 何が悪かったのか分からないけれど、行き先も知らないで置いていかれてはたまらない。
 3人は慌てて上官の後を追い、里を離れた。

 それから小一時間は無言で歩きつめ、たどり着いたのは山間に栄えた宿場町───その外れにひっそりと建つ木賃宿であった。
 よく見れば屋号が染め抜かれた暖簾の端に、小さく木ノ葉隠れの忍文字がある。
 木ノ葉隠れが密かに運営する忍宿なのだろう。

 帳場には寡黙な番頭らしき壮年の男と、若いが無愛想な下女だけ。
 出迎えの声も濯ぎもない。

「もう、居るよね?」

 カカシが割り符を番頭へと渡して問えば頷きだけが返り、薮睨みな下女がじろりと視線で奥へ上がれと促す。
 これがここでは当たり前なのか、カカシは頓着せず上がり込んだ。
 子供たちも恐る恐る後に続く。

 突き当たるまで進んだ廊下は縁側から渡り廊下を抜けて離れへと伸びている。
 離れと言っても簡素な造りで、土間と簡易な水場、二間の小座敷がある平屋だ。

 その奥まった一室の灯り障子を開けながら、カカシがここまでの不機嫌さなどどこかへ置いてきたような、猫なで声を出す。

「ども、お待たせしましたー」

「いいえ。時間通りですよ」
 
 
write by kaeruco。
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