Metamorphosis Game

□2 Avoid Publicity
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Metamorphosis Game




Avoid Publicity



 火の国は周辺諸国にあっては最強の国力を有している。

 それは安定した商業経済や政治といったものが発達しているということだ。
 中でも最も大きな要因であり、外交的圧力となっているのが、優秀な忍を排出する木の葉隠れの里である。

 ただ現在の情勢は複雑な事情が絡み合っていて、面倒事も多かった。

 しかし火の国ではその国力によって築かれた平和の下、豊かな文化が花開いている。

 都から外れていたとしても、有力な大名の城下には日々大きな市が立って人が集まる。

 そんな人々の目を楽しませる小屋も数多くあった。
 見世物は芝居や曲芸だけではない。
 通りを流す物売りですら、行き交う人の足を止めさせる為に、面白おかしく文句を連ねる。

 そんな活気溢れる通りの外れに立つ小屋の前に、一際響く胴間声。

 
「あいやしばらくぅっ!」


 その声に虚を突かれた人々が足を止めてそちらを見やる。

 白髪の美丈夫が背後に黒髪と銀髪の女を従え、小屋を開ける口上を述べるところであった。

「それがしは妙木山は蝦蟇仙人に教えを請うたる白蛙太夫(はくあだゆう)。これなる美女2人は同じく黒金姫、白銀姫」

 男が両手を広げて紹介すれば、右に黒髪の黒金、左に銀髪の白銀が進み出てた。

 黒金は長く美しい黒髪を後ろに流し、左眼を赤い眼帯で覆っている。
 肌が抜けるように白く、赤と黒を基調とした異国風の袖の長い着物が良く映えた。
 右の灰青色の瞳と表情は少し冷たくも見えるが、それで彼女の美しさが損なわれてはいない。

 一方の白銀は長く美しい銀髪を高い位置で結い、ただ前髪は長く垂らしたまま顔の左半分を覆い隠していた。
 瞳は黒く、肌が少し日に焼けていて、黒金と揃いの白と青を基調にした着物が良く似合っている。
 何より、目を引くのはその愛嬌のある笑顔だった。

 そこいらにいた男の殆どが、2人に見入っている。
 所々でため息がもれ、時に下卑た笑いや野次もあった。
 
 それらを無視して男は口上を締めくくる。

「明日より我らこの鬼火一座の舞台を借りまして、仙郷秘伝の妙技の数々をお目に掛けたく思うております。本日はまずのご挨拶にて、この2人の美女の舞をご覧下されましょう」

「それでは皆様、拙き技にてお目汚しをお許しくだされませ」

 白銀姫がそう言って一礼すると、小屋から楽の音が流れ出す。

 その音に合わせ、いや操るように2人は袖を振るって舞った。

 動きにつれて手足に揺れる細い金銀の輪がしゃらりと、袖裾に下がる金銀の鈴がちりりと鳴る。

 2人の舞は対照的だった。

 黒金姫は優雅で完璧な動作で見るものを魅了し、白銀姫はおおらかで叙情溢れる仕草で人の目をひきつける。

 2人の舞は時にせめぎ合い、時に調和した。

 ここは埃臭い通りだというのに、まるで幽谷に遊ぶ仙女の姿を見るような舞。

 やがて楽の音は終わり、2人の舞姫は優雅な礼と美しい微笑を残して小屋へと消えていった。

 再び、白蛙太夫と名乗った男が声を張り上げる。
 
 
write by kaeruco。
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