Metamorphosis Game

□3 Security Risk
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 背は10センチばかり低くなり、身体つきは細くたおやかに。

 けれど、どこかうみのイルカと似たくのいちの隣りに立つイルカは、影分身らしい。

 2人並んでにっこりと微笑むその表情は、恐ろしいまでに完璧な笑顔。

「「アナタが先日、妙なことを口走ってくれやがりましたお陰で、こうして任務のご指名を頂くようになってしまいましてねえ」」

「あー……。それは、申し訳ないです」

 ステレオでトゲを含みまくった嫌味を聞かされて、カカシは素直に謝罪する。

 が、後ろ頭を掻きながらでは誠意のかけらも見受けられない。

 ちなみに、イルカの言う、カカシの口走った妙なこと、とは。

 それは以前、共に任務に就いた時、黒金バクヤに変化していたイルカを、自分のパートナーだと言ってしまったことだった。

 あの。
 写輪眼のカカシの。
 パートナーだと。

 そんなコトが公になれば、色々な意味で黒金バクヤに興味を持つ人間が増えるのは自明の理。
 火を見るよりも明らか。

 木ノ葉のくのいち、黒金バクヤは元々の舞姫としての名声も手伝って、瞬く間に有名な忍になってしまったらしい。
 
 このように、便宜的に使った変名や仮の姿が本人よりも知られてしまうことは稀だ。

 しかし、ないワケではない。

 木ノ葉の里では──きっとどこの里でも、そういった名は、うまく使ってきた。

 それに仮の名や姿が面倒になれば、死んだとすればいいだけだ。

 元々居なかったのだから、痕跡の抹消も簡単なものだろう。

 第一、黒金バクヤという女は舞姫として名と芸を売っていた。

 それも超一流として。

 忍であると知れれば、名指しの依頼がくるのは、覚悟のうえ。

 けれど、バレ方がマズ過ぎた。

 黒金バクヤがはたけカカシのパートナーだということは、バクヤに依頼された任務には、写輪眼のカカシがもれなくついてくる可能性が高い。

 というか、いくらバクヤ──イルカが拒否しても、ついて来るはずだ。

 カカシが。

 子供のような屁理屈を並べてごねるカカシが容易に脳裏に浮かび、その想像だけでイルカは死ねそうな頭痛を覚える。

──……だから、アンタに知られるのだけは、嫌だったんだ……

 そう、心の中で涙ながらに拳を握ってみても、もはや手遅れなのだ。
 
「ま、2人っきりにゃ変わりないから、いーんですけーどね」

 のんきに言い放つカカシへ、バクヤがいつものイルカ然とした口調でたしなめる。

「何言ってるんですか! 今回はスリーマンセルですよ」

「え? イルカ先生、分身しっぱなし……ってー、なにすんですかー?」

「イルカはオレですっ」

 バクヤに向かってイルカ先生と呼ばわるカカシへ、影分身イルカが容赦なく裏拳でツッコミを入れてくる。

「まだ里内で人目があるんですから、少し考えてくださいよっ」

「ああ、そーうでした。なーんか、イルカ先生と一緒だとオレ、気ぃ緩んじゃうんですよー」

 えへへとテレ笑いを浮かべるカカシは、知らない。

──……じゃあ一緒に激戦地に着任すりゃ、その日のうちにオサラバかなー

 などとイルカが考えていたとは。
 世の中、知らない方がシアワセなことは多いものだ。

「任地への道程で詳細を話します」

「ちなみに、隊長はオレ、副長はバクヤです。以後は、指示に従ってくださいね」

「りょーっかいです。イルカ先生、バクヤさん」

「「では、出発しましょう。カカシさん」」
 
 
write by kaeruco。
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