Metamorphosis Game

□4 NOBODY `TIL YOU
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NOBODY `TIL YOU



 その日も上忍としての過酷な任務を終え、はたけカカシは何故かウキウキと報告書を提出するために受付へ向かっていた。

 陽気が春めいてくるにつれて、木ノ葉崩しから続いている里の混乱もだいぶ落ち着きを見せ始めている。

 休講となり、教師たちまで里外の任務へと借り出されていた忍者アカデミーも来月から再開されるらしい。
 それはつまり、うみのイルカが受付へも戻ってくるということだ。

 彼にただならぬ思慕を抱いているカカシが浮き足立つのも無理はない。

 しかし、そのご機嫌も受付所の扉を開くまでだった。

「あれー? イルカ先生はー?」

 上忍の精密で的確な視力とすばやい判断力でイルカの不在を察知したカカシは、子供のように拗ねた声をあげる。

 そのままほてほてとカウンターまで進み、記入済みの報告所をぺいっと放り投げ様に誰ともなしに問いかけた。
 
「ね、イルカ先生、今日はこっちいないの?」

 アカデミーかと、カカシは聞いたのだが、奇妙なほど緊張した声が予想外のことを告げてくる。

「あああ、はいっ! イルカは任務でしばらく不在だそうですっ」

「え? 任務なの? だって来週にはアカデミー再開するんデショ?」

「ええ、やっとメドがついたそうで……」

 アカデミー教師陣はようやくのアカデミー再開にむけて今とても忙しく、新人下忍やアカデミー生の手を借りて準備をしている最中だった。

 はっきり言って人手は多いにこしたことはないし、なにより教師として信頼も実績もあるイルカの存在は必要なハズではないだろうか。
 それなのに、そんなイルカに任務とは一体どういうことなのかと、カカシは考える。

「だったら、なおさら先生が任務なんて……」

「ええと、実は毎年、のことなんです」

「毎年?」

「は、はい。毎年、この時期はイルカ指名で任務が入ってまして……」

「イルカ先生に?」

 だいぶ落ち着きを取り戻してきた受付係だったが、じわじわと増していくカカシの不機嫌さに色をうしなってゆく。
 
「え、ええっ。毎年ってことは、平和な任務、だと思うんですが……」

 しどろもどろな答えだったが、内容は的確。
 そして任務内容を問いただす隙も与えてくれなかった。

 流石、木ノ葉隠れの優秀な中忍。
 イルカ先生の同僚。

 侮れない。

「あ、指名といえば、カカシさんにも指名任務が入ってますので、確認していってください」

 そして、見事な切り返し。

「では、報告書は受領いたしました。これにて任務終了です。お疲れ様でした」

「……あー、はい。どーもね……」

 受付係の有無を言わせぬ任務終了の宣告に送られ、カカシはとぼとぼと報告所を後にする。

 そのまま自宅へ向かおうとして、待機所の手前で見慣れ過ぎた同僚に呼び止められた。

「おう、カカシ。ちょーどイイとこで会ったぜ」

「ナニ?」

「5代目がお呼びだ」

「えーっ! 今、戻ったトコなのにーっ」

 駄々をこね始めるカカシの襟首をとっ掴まえ、アスマはずりずりと引きずってゆく。

「いいからきやがれ。そんでキリキリ働こうや」

 めんどくせえ、が口癖のアスマらしくない台詞にカカシは引きずられたまま茶々を入れた。
 
 
write by kaeruco。
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