Nessuno Vive Per Sempre

□小夜鳴き鳥は死の運命、
5ページ/23ページ

 
かまいたちの   
    



write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

 ふと気付くと、リボーンは激しく揺れる獄寺隼人の肩に乗っていた。
眩しいまでの西日と、思いの外暗い日陰を交互に抜け、並中の階段を駆け上がっていく。

「畜生っ! あいつら全員、絶対ぇ果たしてやるっ!!」

「ああ、こいつは正当な復讐だゾ」

 激昂し、既にダイナマイトを手にしている獄寺を諫めもせず、リボーンも懐に吊した相棒をスーツの上から撫で、眉を吊り上げる。

 沢田綱吉へのイジメは、当事者が反撃も対処も相談すらしなかったことで、既に暴行と言える域にまで及んでいた。
雲雀からの知らせでそれを知ったリボーンは獄寺を伴い、放課後に教室から連れ去られた綱吉を追って並中の屋上へと向かっている。

 綱吉本人がどう考えていようとも、これまでの功績はイタリア屈指のマフィア、ボンゴレの10代目ドンとして裏社会に認識されていた。
しかし、仲間が危機に陥れば戦うことも厭わない彼は至って温厚な気質で、マフィアとして鍛えられた自身の能力を一般人へと向ける事など考えもしない。
ゆえにイジメに耐えてしまい、マフィア関係者ばかりの周囲には相談もできず、結果的に対処もできずにいたせいでイジメに走った生徒たちを増長させてしまった。

「ダメツナめっ!」

 家庭教師として教え子の陥っていた状況に気付かずにいたことを苦々しく思い、けれど相談すらしなかっただけでなく自分で解決も出来なかった綱吉を責める声音には自戒も含まれていた。
だからこそ、戻ってきたらねっちょり修行だゾ、と遠回しに無事を願う。

 それは常に右腕であることを声高に自称し、普段から鬱陶しいまでにまとわり付いては周囲から駄犬と揶揄される獄寺も同じだった。

「10代目っ! どうか、ご無事でっ」
 
 獄寺が主と慕う少年は、弱くはない。

 けれど、彼が拳を向けるのは仲間の命を守るために強大な敵にだけ。
一般人へその特異な能力を向けてはならないという掟以前に、ただの中学生でしかないクラスメートへ反撃するなど思いつきもしない人だ。

 だからせめて、自分だけにでも話してくれていたらと思えば歯痒く、それ程の信頼は未だ得ていないのかと考えれば情けなくなる。
ならば、2度とこんな馬鹿をしでかさないよう、10代目に仇なすやつらを果たし、今まで以上に傍で守るのだと誓う。

 気の急くまま2段飛ばしで一気に駆け上がってきた勢いのまま鉄扉を乱暴に蹴り開け、屋上へと飛び出していった。

「10代目っ!!」

「ツナッ!!」

 最初に目に入ったのは、オレンジと紫が混ざり合った夕暮れの空。
そこから視線を下ろすごとに、夕闇に沈みゆく街並み、錆びつき歪んだ防護柵と立ち尽くす数人の男子生徒、そして屋上。

 見渡す視界に、沢田綱吉の姿はない。

「おい! 10代目はどこだっ!?」

 獄寺が手近な生徒の胸ぐらを掴み、強い口調で問いただすが、はっきりとした答えを返す者はいない。
 
 
UP DATE:2013/10/14
write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ