Nessuno Vive Per Sempre

□小夜鳴き鳥は死の運命、
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時は  
 そろしい



write by kaeruco。
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───な、んで……こん、な……

 夕闇に染まっていく暗い空を見上げ、沢田綱吉はこれまでの出来事を、こうなってしまった経緯を思い返す。

 愉快で気の良い友人の山本武や騒がしく思い込みも激しいが素直に慕ってくる獄寺隼人、明るい笑顔に多くの男子生徒が淡い思いを抱く笹川京子に彼女の兄で良き先輩の笹川了平。
彼らと居る時、特に強く視線を感じるようになったのは、最近のことだった。
 
 良くも悪くも───それぞれの見た目や騒動を巻き起こす言動によって衆目を集める彼らと、ダメツナと蔑まされる綱吉が一緒にいれば、人目などいくらでも引く。
けれどそういう、ただ見ている、というものではなく、物言いたげな意志を持った視線が増えたのだ。

 それもまた良くある人気者の友人たちへの想いだろうと考え、なにか伝えたい事があるのではないかと気を回すのが沢田綱吉である。

 だが、それがいけなかった。

 友人たちが不在の放課後、たまたま通りかかった廊下の一角に近頃の視線の主───クラスは違うけれど、行き会えば挨拶を交わすくらいはする知人たちを見かけて話しかけたのだ、が。

「あのさ……最近、山本か獄寺くんのこと良く見てるみたいだけど、何か用があるなら、伝えようか?」

「はあっ!?」

「何様のつもりだよ、ダメツナ!」

 彼らの勝手な思い込みでしかないが、まるで自分を通さなければ山本や獄寺と話しもさせない、と綱吉に悪意を向けていた者には受け止められた。

「ちょうどいい。折角だし、話しつけようぜ」
 
 そうして矢継ぎ早に並べ立てられる、綱吉が付きまとうせいで山本や獄寺、笹川兄妹が被った───と、彼らが思い込んでいる───被害の数々。
その言いがかりも甚だしい内容に綱吉は戸惑い、呆れた。

 だって彼らと共にあるのは綱吉が望んで始まった事ではなかったし、彼らがそれぞれの友人や用事を優先させる事を阻んだつもりはない。
それなのに、お前に付き合わされて山本は部活に専念できないとか、ダメツナが苛立たせるから獄寺が事あるごとにキレてんだとか。

「ちょっと待ってよ。なんで俺がそんなこといわれなくちゃいけないの!?」

 とても納得できない彼らの言い分は誤解だと綱吉が言い返せば、ついという形で手が出たのだろう。

「いいかげんにしろよっ、ダメツナっ!」

 綱吉の言葉を───彼らにしてみれば言い訳を遮って、1人が身振りの手を叩いたのをきっかけに誰かが綱吉を突き飛ばし、床に転がった彼に足を振り上げる。

 最初の暴力はそれだけで終わった。

 とっさに両手で頭を庇ってうずくまる綱吉へ、これに懲りたらあいつらにまとわりつくのやめろよなと言い捨て、彼らはそそくさと立ち去っていく。
 
 
UP DATE:2013/11/29
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