Nessuno Vive Per Sempre
□小夜鳴き鳥は死の運命、
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雲雀の歌。 write by kaeruco。
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「ねえ」
その一部始終を見ていた者が問い掛ける。
背後を振り返った少女と相対するのは、同じ顔を不機嫌そうにしかめた少年。
「雲雀恭弥」
「どういうこと?」
彼にしてみれば、今、目の当たりにした何もかもが不可解だった。
並盛中学に流れた奇妙な噂を確かめに赤ん坊と現場へ来てみれば、お気に入りの小動物が屋上から落ちてくる場面で。
なのに次の瞬間には、落ちたはずの小動物が何事もなかったかのように見知らぬ───けれど良く知った───自分と同じ顔をした少女と訳のわからない話しをして。
そうかと思えば、何かを悟ったような表情で沢田綱吉の姿は炎が揺らめくように希薄となり、消えてしまった。
酷く雲雀の機嫌が悪いのは、これらが彼にとって不倶戴天と言える存在による幻術なのでは、と疑っているからだろう。
「君、何者?」
そんな雲雀の不興など気にもせず、少女は静謐な瞳で同じ顔で睨みつけてくる少年の問いに応える。
「私は生死を司り、魂を掌る、姿なき、名なき、時なき者」
「姿がない? なら、今、僕に見えている君のその姿はなんなのさ」
「この姿は沢田綱吉が知覚し、見いだした。言わば彼が与えた、この世界での私の仮初めの形」
「その沢田綱吉はどうしたの?」
「彼の望む世界に」
「望む世界?」
「こうであれ、と沢田綱吉が願う、改めて構築される世界。あの子供に望まれた人々が幸せに暮らせるであろう世界」
最期に沢田綱吉が願ったのは───理不尽な騒動に巻き込まれることも、家族や友人が傷つくことも、マフィアになる必要もない、平和で平凡な人生。
そして、仲間とした人々が幸せに平穏に暮らせる世界。
「そんな世界に、あの小動物に、僕が望まれるとでも?」
自嘲混じりに雲雀は言い捨てる。
沢田綱吉の望む平穏な世界と、雲雀恭弥が求める秩序ある世界が交わる物ではないという自覚があった。
それでも、あの不思議な強さを持ったか弱い小動物の居ない世界を想像した時の味気なさに、恐怖すら覚える。
なら、どうすればいい。
「それなら」
失わない為の算段を模索する雲雀へ、少女は提案を持ちかける。
「君も彼のように私へ何かを与え、望む世界を手に入れるか?」
「君に? 僕が?」
自分と同じ顔をした少女を見返し、雲雀は考える。
自分が彼女に与えられる物を。
生死を司り、魂を掌る、という少女に。
姿も名も、時すらもないという存在に。
姿は沢田綱吉が与えた。
時を操る術など知らない。
そして、望む世界。
「だったら、これはどうだい?」
並盛中学の朝は早朝練習に励む部活動の活気溢れる光景とは対照的に、異様な緊張感を持って静かに始まる。
時代錯誤な格好で立ち並ぶ風紀委員会が服装検査と遅刻の取り締まりを行う正門付近は特に。
write by kaeruco。
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