Nessuno Vive Per Sempre

□小夜鳴き鳥は死の運命、
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 なにしろ風紀の乱れと騒がしい群れを嫌う雲雀恭弥が風紀委員長として君臨する並盛では、そういった輩は容赦なく咬み殺される。
正確な時刻調整により鳴り響く始業の鐘と共に校門が閉ざされれば、正当な理由もなく遅刻した生徒は風紀委員長が振るうトンファーの餌食となるしかない。

 そんな一風変わった朝の風景───では済まされない並盛中学の校門へ、1人の男子生徒がよろめくように駆け込んで来た。

「……ま、間に合わなかったーっ!!」

「叫ぶ元気があるなら、遅刻の理由を言いな。2-A、沢田綱吉」

「ひっ! き、恭弥さんっ」

 小さく、おはようございます、と挨拶する少年に律儀に雲雀も返す。

「おはよう、綱吉」

 が、トンファーを突きつけて、先を促しもする。

「それで?」

「えーっと、ですね。いつも通りの時間に家を出たんです、けど……」

 散歩中の犬が飼い主振り切って飛びかかってきたから慌てて避けたら如何にもガラの悪そうな人にぶつかって、殴られそうになったから必死で逃げ出したらうっかり学校とは逆方向に走ってて、回り道して学校向かったら水をぶっかけられそうになってとっさに避けた弾みで転んだりして……。
 
「……遅れました」

 まるでギャグ漫画かお笑いのコントみたいな言い訳だが、綱吉を見れば嘘ではないと分かる。
胸元には誰かに掴まれただろう乱れがあり、水溜まりに尻餅でもついたのかズボンが濡れていた。
肘や手のひらにも擦り傷があり、膝には血も滲んでいる。

 朝から続け様に起きた不幸な出来事にか、それとも情けない綱吉の姿にか、呆れを隠しもしないため息を吐いた雲雀は、目の前に所在なく立つ綱吉の額を軽く叩いた。

「って!」

「わかった。理由は認める。保健室で処置してもらってから授業にいきな。教師には連絡しておくから」

 そう告げると雲雀は他の遅刻者の制裁に戻り、綱吉も素直にそうしますと言って昇降口へと向かう。

 一見、破格の扱いにも思えるが、実は雲雀が納得する理由ならば誰であってもこの程度で済むのだ。
だから並中生の間では、密かに遅刻した言い訳を『命懸けの大喜利』と呼んでいる……らしい。

 もちろん、2人が名前で気安く互いを呼び合っている理由も並盛の住人なら周知のこと。
雲雀恭弥と沢田綱吉が幼なじみだと。


 


 
 朝の取り締まりを終え、授業の始まった並盛中学の応接室で風紀委員長としての実務を行っていた雲雀恭弥は、不意に響いた扉を叩く音に手を止めて入室を許可する。

「入りなよ」

 相手を確かめなかったのは、扉を叩くまで存在を気づかせない者が1人しか思い至らないからだ。

「珍しいね。授業中にここへ来るなんて」

「確認したいことがあってね。草壁、悪いが外して」

 雲雀恭弥と同じ口調で話す同じ顔をしたセーラー服姿の女子生徒の要請に、副委員長の草壁は自身の上役へ伺いたてる。

「では、委員長」

「うん」

「はい。失礼します」

 一礼した草壁が応接室を出た所で、保健委員を示す紫紺の腕章をした少女が手にしていた1通の書類を風紀委員長の執務机へ置く。
けれどそれは保健室の利用記録で、普段は副委員長経由で提出されているものだ。
副委員長を退出させる程重要ではない書類にざっと目を通した風紀委員長は、彼女がここへ来た本題を促す。

「それで、なんの用? 小夜?」

「私に確認したいことがあるのは君だろう? 恭弥」

 互いを名で呼び合い、同じ顔をした彼らは苗字も同じ雲雀だ。
 
 
write by kaeruco。
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