Nessuno Vive Per Sempre

□小夜鳴き鳥は死の運命、
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 雲雀恭弥と雲雀小夜は双子の兄妹で、それぞれ並盛中学の風紀委員長と保健委員長を務めている。
つまり恭弥に校内で咬み殺された生徒は保健室に運ばれて小夜に応急処置などをされる為、非常に尻の座りの悪い思いをするのだ。
そのおかげもあって、校内の風紀は概ね守られている。

 ただ、彼と彼女の間にはもう1つ、余人の預かり知らぬ関わりが存在していた。

「なら聞くけど、これがあの小動物が望んだ世界だっていうの?」

 別の世界で事故死した沢田綱吉が最期に願った、やり直しの世界だと知っているのは雲雀恭弥と雲雀小夜の2人きり。
彼らにはきちんとこの世界で生きてきた記憶もあるが、以前の世界の出来事もみな覚えていた。

 だから、改編された世界で恭弥が真っ先に確かめたのは沢田綱吉を始めとしたかつてのボンゴレ関係者の所在。

 沢田綱吉は並盛に暮らし、雲雀とは幼なじみという間柄だ。

 イタリアには慈善事業を行うボンゴレ財団なる組織があるらしく、綱吉の父親も相変わらずそちらへ所属しているようだが、マフィアでもなければ、不可解な力を秘めた指輪と血統による相続などはない。
その証拠に財団関連のニュースサイトでは現理事長の養子という見覚えのある男が次期理事長として紹介されている。

 綱吉の周囲に居た者達の殆どは並盛やボンゴレとは離れて暮らしているらしい。
イタリアにいるであろう不可思議な赤ん坊や、右腕を声高に自称していた者などの行方は掴めていないが、親友を名乗っていた方は他県の野球強豪校にスカウトされて寮生活をしている。
極限ボクシング馬鹿も五輪強化指定選手というのに選出されて都心の合宿施設で生活しており、兄の応援に都内へ頻繁に行っていた妹も業界関係者に誘われたかで少女向けのファッション誌で読者モデルをしており、並盛中学には通っていない。

「ボンゴレをマフィアでなくしておいて、その上であの小動物の周りで騒いでいた群れまで遠ざけてる理由は?」

「沢田綱吉は自分の都合に周囲の人間を巻き込んだ、と見当違いな負い目を感じていたからね」

 実際はボンゴレの事情に綱吉諸共周囲を彼の父親や家庭教師が勝手に巻き込んだ、というのが正しい。
後継者問題をマフィアの事など何も知らない遠い異国の子供に本人の意向を無視して押し付けたようなものなのだから。
 
「ふうん。それで、あの不愉快な南国果実が健在なのは?」

 隣町の黒曜には名が違うが、あの六道骸としか考えられぬ言動と髪型の人物がいる。
かつて彼を慕い、共にあった者達も。

「六道骸は自らの意志で後ろ暗いマフィアの世界に足を踏み入れる危険性があったからだろう。それを察してマフィアから遠く、かつ目の届く所に留めたんだ」

「……そう。なら、僕は?」

 世界が改編されようと、雲雀恭弥は変わることなく並盛の支配者で風紀委員長の雲雀恭弥だった。
沢田綱吉とは幼なじみという以前とは違う繋がりを持ってはいるが、今のところ互いの距離感はあの頃と大差ない。

「君が君のままであることが沢田綱吉の願いであったし、君と私の契約でもあった」

「うん。でも、どうして君まで?」

 この世界での小夜は雲雀恭弥の双子だけれど、以前は存在していない。
姿も名も時すらもなく、生死を司り魂を掌る者であった。

 沢田綱吉によって雲雀恭弥と同じ顔をした少女の姿を見出され、雲雀恭弥から雲雀小夜という名を与えられた。

 それゆえに。

「きっと、あの子の認識する《みんな》に組み込まれてしまったんだ、《私》も」
 
 不満か、とこの改編された世界で己の片割れとして存在する者に問われ、恭弥は穏やかに否定した。

「これが、綱吉の望んだ世界なら、それで構わないよ」

 
 

 
‡write by kaeruco。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]
(初出:2013/12/31 
最終更新:2013/12/31)

 
小夜鳴き鳥は死の運命、

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