Nessuno Vive Per Sempre

□小夜鳴き鳥は死の運命、
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 ただ口々に、俺じゃない、俺のせいじゃない、あいつが悪い、と繰り返す。

「どういうことだっ!? てめえら、何を隠してやがるっ!」

「……獄寺、見ろ……」

 生徒に殴りかかろうとしていた獄寺を止めたのは、肩に乗ったままのリボーンだった。

「なんすか、リボーンさん?」

 こいつら吐かせて10代目の居場所を、と喚きかけた獄寺が言葉を詰まらせる。

 リボーンが幼気な手で指し示していたのは、男子生徒たちの視線の先───支柱の根元が基礎から外れて大きく隙間を開けた転落防止用のフェンスだ。

「……う、そ……だ……」

 覚束無い足取りでフェンスへと駆け寄る獄寺と、肩に乗ったままのリボーンは屋上の縁から身を乗り出して覗き込み、言葉を失う。

「……ツ、ナ……」

 既に日が暮れ、影が濃く落ちる地上───校舎から張り出した昇降口の屋根に、赤黒い水溜まりが広がっていた。
その真ん中に、制服姿の華奢な男子生徒が1人、仰向けに倒れている。
爆発したかのように方々へ跳ねた栗色の髪も、母親に瓜二つの幼い顔も、夜目でも判別できるくらいに見慣れた物だ。

「……そん、な……」

 信じられない。

 だって、綱吉は強い。
獄寺を庇う程に。

 リボーンが鍛え上げたのだから。

 こんなところで、人目に曝すことはできないと分かっているが───死ぬ気の炎を両手に灯して自由に大空を駆けることもできた。

 なのに。

「間に合わなかったようだね、赤ん坊」

 リボーンの自責と、獄寺の悔恨を逆撫でする言葉を敢えて発し、雲雀が屋上に姿を現す。
風紀委員長の登場に男子生徒たちは慌てふためくが、唯一の出入り口を塞いでいるのが雲雀であるため、逃げ出すこともできない。

「雲雀! てめえはっ!」

「ふうん。君たちだけかい?」

 獄寺に構わず、屋上を見渡した雲雀は呆れと驚きをない交ぜにした声で問う。

「山本武と笹川了平はいないんだね?」

「2人とも部活があるからな。呼びに行く時間も惜しかったんだ」

 たまたま教室にいた獄寺だけを引き連れてきたのだが、とリボーンは視線を落とす。
それでも、間に合わなかった。

「じゃあ、駄犬は君に巻き込まれたわけかい?」

 非道いね、と少しの憐れみも感じていない声音で笑う雲雀に、誰もが違和感を抱く。

「どうせなら、あの南国果実も道連れにしてやればよかったのに……」
 
 そんなを呟きを耳にしたリボーンは、何がおかしいのか気づいた。
あれだけ毛嫌いしている六道骸の事まで話題にしているのに、雲雀はやけに機嫌がいいように見える。
こんな時だというのに。

「ああ、でも」

 ふいに1人の男子生徒が握り締めていた物を見咎め、笑いを収めた雲雀の気配が剣呑さを帯びる。

「いらない物は、置いて行ったみたいだ」

 雲雀の視線を辿り、名も知らぬ少年の手から零れる細い鎖を見つけたリボーンと獄寺は目を見張り、次に肩を怒らせて彼へと詰め寄った。

「てめえ! まさか……10代目の、リングをっ!?」

「なんで、てめえなんかがソイツを持ってやがるっ!」

「ひぃっ!」

 2人の勢いに怯えた少年は、こんな物など持っていられないとばかりに握り締めていた物を放り出す。
硬い音を立て、屋上に転がったのは見間違いようもなく、大空のボンゴレギアだった。

「ああ」

 遠く山の端に沈む太陽の残照を目に止めた雲雀から暗い、どこか喜びをはらんだ感嘆が漏れた。

「……日が沈んだね」

 構えた両腕には馴染んだ武器。

「君たちは、咬み殺す」

 その言葉と同時に響いた打撃音と呻き声。
 
 
UP DATE:2013/10/14
write by kaeruco。
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