Nessuno Vive Per Sempre

□小夜鳴き鳥は死の運命、
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衝動的な自分たちの行動に戸惑ったのかもしれない。

 その時は。

 しかし数日後、そしてまた後日、と同じやり取りが繰り返され、いつしか彼らにとって綱吉への暴力は日常的に行われるようになっていった。

 もちろん綱吉だって黙って殴られる事はしなかった。

 彼らの言い分にも理解を示した上で君たちがそう考えるのなら彼らが直接訴えればいいと告げ、避けられる暴力は反撃はしないまでも見切って避けた───生意気なんだと言葉は黙殺され、数人がかりで押さえつけられ殴られる始末だったが。
第三者の大人である教師へ相談もした───いざとなれば風紀委員が出張ると思っているからか、なんの対処もされなかったが。

 そしてなにより、自身の周囲にこの事が気づかれないよう立ち回った。

 文字通り導火線の短い爆弾のような獄寺や、さらっと恐いことも言う山本に知られれば、報復だのなんだのと暴力的な騒ぎになりかねない。
風紀委員に訴えれば風紀を乱したと双方が雲雀に咬み殺されて終わるかも知れないが、風紀委員長が一目置く家庭教師を通じて友人たちへも伝わる可能性は高い。
そうなった時に暴走するであろう自称右腕と親友を止める自信も手立てもないし、家庭教師が修行にかこつけたお遊びを始めたら被害が拡大するのは目に見えている。

 懸念はそれだけでなかった。

 綱吉は望んでの事ではないが、血筋によってマフィアと関わりを持った為、厳格な掟に縛られているのだ。
それに抵触するような行動を───生徒にマフィアの力を向けるなどして、あの恐ろしい《復讐者》に捕らわれるのではないかと考えてしまう。

 だからどんなに無謀でも、綱吉は自分独りで、友人たちや家庭教師に知られる前に、この問題を解決しなければならないと思っているのだ。
大切な友人と、自分に暴力を振るう生徒たちのために。

 今日も放課後に友人たちの目を盗んで呼び出された屋上に1人で行ったのも、彼らを案じてこれ以上の暴力をやめさせたかったからだ。

 必死に、理不尽な暴力に耐えながら、訴えかける。
彼らだって分かっているはずだ。
こんな事を何度繰り返しても鬱憤など晴れず、返って罪悪感ばかりを抱え込んで、いつか風紀委員に見つかって咬み殺されるかもしれないと怯えている。
けれどきっかけが掴めず、惰性で綱吉を殴りつけ、余計にイラついてまた綱吉へとぶつけるという悪循環に陥っているのだ。

「いいかげんにしろよっ!!」

 誰に向けられたのか分からない、身を切るような叫び声と同時に、綱吉の身体は屋上の転落防止柵へと突き飛ばされた。

 並中の屋上はある生徒が起こした自殺騒ぎでフェンスが破損して以降、通常の中学では想定されていない爆発や戦闘によって修復と破壊が繰り返されている。
そのせいか、生徒がぶつかった衝撃で支柱が外れてしまうくらいに、とっさに伸ばした手で掴んだ縁が崩れてしまうくらいに、脆い部分もあったのだ。

 その瞬間、綱吉が見たのは、茫然と見返すだけの生徒たちの顔と、無情に揺れる外れた柵、そして懐かしさすら覚える鮮やかなオレンジ色に染まった空。

 全身を叩きつけられる激しい衝撃に呼吸を妨げる何かを吐き出した後、綱吉は自分が屋上から落ちたのだと理解した。
じわじわと失われて行く身体の感覚に、自分が死んでいこうとしているとも。

 悔いは、ある。
 
 
UP DATE:2013/11/29
write by kaeruco。
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