カカイル

□宴の後
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 誕生日を2人で過ごす約束をしていたのに、いくら待っても帰って来ない。

 未明に帰ってきたのはいいが、オンナの匂いをさせて浮気までほのめかす。

 更に、浮気を追求したら肉体言語(暴力)に訴えてきた。

 確かに非道な仕打ちだが、大の男がじくじく泣きながら並べ立てることじゃない。

 呆れても、泣く恋人にはフォローをしなければと、イルカも腹を括る。

「帰りが遅くなったことは、謝ります」

 連絡できなかったのと、帰ってきてからのことも。

「夕べは、すみませんでした」

 待っててくれたのに。

「……理由、聞かせてもらえますか?」

 すん、と鼻をすすり上げるカカシは、どうも本気で泣いていたようだ。

「任務じゃない、ですよネ?」

「はい」

 実は。

「アカデミーの飲み会に、連れて行かれちゃいましてー」

 言いにくそうに、けれど悪びれもせずにイルカは告白する。

 アカデミー教師の独身同士で誕生日の近い者を主役というか口実にしての飲み会だった。

 ちょうど祝われる立場であり、表向きは恋人などいないとしているだけに、断りきれなかった。

「すぐ帰るつもり、だったんですけど……つい、長っ尻に」
 
 それは、解りました。

「で、オンナと?」

 きっちり正座で問い詰めてくるカカシへ、イルカの答えは曖昧だ。

「それは、ない……と思います」

 だって。

「あの席にいた女性は、オレの母親みたいな年の方ばっかでしたし……」

 確かに、なんやかや面倒もみて貰った気はしますが、結局、香水きつくて悪酔いしちゃったんですよねえ。

「ですから、いくらなんでも、流石に、ねぇ……」

 存外に辛辣な言葉を、イルカは笑って言い放った。
 ついでに、カカシを煽るようなことまで。

「そんなに疑うんなら」

 額当てを外して放り、ベストの前を開いてアンダーを指で引き下げて鎖骨をさらす。

「確かめて、みますか?」

 薄暗い中にさらされた、無防備な喉。

「……いいでしょう」

 カカシはごくりと生唾を飲み込んでうなずく。

「夕べ、ほったらかしにされた分まで、サービスさせて貰いましょーか」

 イルカの手をとって立たせながら、わざわざ確認するまでもないことを訊ねてくるくせに。

「そういや、先生。仕事は?」

 手を引かれるまま、カカシに寄りかかるように立ったイルカはニヤリと笑う。
 
「潰れるまで飲まされましたから、休みにしてもらってますよ」

「イルカ先生……」

 わざと、デスね。

「どうでしょうか」

 カカシの確信に満ちた目から逃れるように、イルカは頬をすり寄せた。

 ざりざりした慣れた感触に眉をしかめて、ぽつりとつぶやく。

「ヒゲ、剃ったほうがいいかなぁ」

 
【了】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2006/05/16
UP DATE:2006/06/18(PC)
   2008/10/27(mobile)
*2006年【3年目の浮気疑惑】企画
 
*お話の感想&要望はBBSCLAPへどうぞ。
 
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