カカイル

□優しい言葉
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「イルカ先生……」

 抱きつくように上がりこみかけ、慌てて後ろ手に扉を閉めた。

 それから改めて抱きしめ、額を肩口に押し付けたて気持ちを落ち着けてから耳元に返す。

「ただいま」

 ちらりと見えたテーブルは、この関係が始まった時と同じ食器が並んでいた。

 2つ並んだ藍地のグラスには、切り子で刻まれた時期外れの桜。

 それが、最初だった。

 この人との繋がりが欲しくて、必死だった自分が思い出される。

 それを彼も覚えてくれていた。

 嬉しくて、気恥ずかしくて、そんな自分が情けなくて、幸せで息が苦しくて、動けない。

「……ただいま」

「おかえりなさい、カカシさん」

 苦笑しながらも抱き返してくれる腕の強さは、どんな言葉よりも優しく思えた。

 
【了】‡蛙娘。@ iscreamman‡
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WRITE:2005/09/14
UP DATE:2005/09/15(PC)
   2008/11/23(mobile)
 
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