カカイル

□せんせいのお時間
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せんせいのお時間



「イルカ先生、これはどーゆーコトですかっ!?」

 カカシがイルカの前に突きつけたのは、中忍登録簿だった。

 これは機密文書で、当然持ち出し禁止。

 保管庫への立ち入りだって一々火影の許可が必要。

 けして、自由に閲覧できる代物ではない。

 ずいぶん大層なものを自宅へ持ち込んでくれやがった上忍は鼻息荒く、詰め寄ってくる。

「説明。してくれませんか? イルカ先生」

 イルカは言葉もない。

 心底呆れ、開いた口がふさがらないのだ。

 第一、カカシがなにを訊ねたいのかが分からない。

 常々、忍者としては天才な分、他のところでは紙一重な方に近いとは感じていた。

 いたが、ここまでとは思っていなかった。

 そんな子ほどかわいいと言うが、大人では可愛げもないとイルカは痛感する。

「イルカ先生、聞いてますか?」

「話が見えないので、最初からお願いします」

 聞いていなかったとは言わずに促せば、カカシも冷静さを取り戻す。
 
「あー。ちぃっと、突っ走りましたか〜」

 ばりばりと後頭部を掻き、登録簿の1ページを開いた。

 それは、イルカの忍者登録証。

「コレ、なんですけーどね〜」

 アカデミー卒業年齢を指し示し、カカシは訊ねる。

「今のイルカ先生の歳と、計算合わなくないですか?」

「ああ。登録間違いですね」

 あっさりと、イルカは答えた。

「オレ、普通の学問所を卒業してから忍者アカデミーに入ったんです。でも小柄だったせいか、同期生と同じ年齢に間違われたらしくて……」

「えっと、じゃあ?」

「アカデミー卒業は14歳でした」

 自分でも登録内容を確認しながら、イルカは懐かしそうに話し出す。

「両親は、普通の人がどんな風に生きてきたか知らないといけない、なんて言ってました」

 けど、と言葉を切って空を見上げた。

「忍者に、したくなかったのかもしれません」

 めったにないイルカの昔話。

 実はカカシが忍者登録証を盗み読みしたのも、彼の過去を殆ど知らないからだった。
 

「ごめんなさい。イルカ先生」

 カカシは素直に頭を下げる。

「勝手に、調べたりして。それで、いきなり飛び込んできて、怒鳴ったりして……」

「いいですよ。オレも助かりましたから、今回は不問とします」

 イルカはカカシに微笑んでみせる。

「でも、コレは後で返して来てください。一応、里の機密文書ですからね」

「はいっ! ……って、後で、ですか?」

「ついでですから、他も確認しておきます」

 そう言って列記された経歴に目を通す。

「イルカ先生」

「なんでしょう?」

「アナタ、学問所って何ヶ所通いました?」

 えーっと、と指が辿る学問所はずいぶんな数。

 しかも、アカデミー入学前に最高学府まで修学し終えている。

「聴講生として一時在籍したところを含めて、20越えますかねぇ」

「まさかと思いますが、今も?」

「流石に通えませんから、通信大学を受講してます」




 
「そういえば、カカシさんってアカデミー卒業はいくつでしたか?」

「あ〜、登録証には5歳ってあるんですけど、実際には通ってません」

「……まあ、時代が悪かったですからね」

「今なら、イルカ先生が受け持ってくれますか?」

「アナタを? 勘弁してくださいよ」

「じゃー、今から個人授業ってのは?」

「あ、オレ今からお茶の間留学の時間なんで」

「えぇっ!?」

「ついでですから、登録簿返しに行ってきてください」

 ひとかけらの遠慮も容赦もなく、イルカは登録簿を持たせたカカシを放り出した。

 
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2004/11/29
UP DATE:2004/11/29(PC)
   2008/11/18(mobile)

 
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