カカイル

□君は僕の輝ける星
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君は僕の輝ける
 
2 サンタがまちに待っている
〜 Santa Claus Is Waiting To Waiting 〜



 12月24日、クリスマスイブもあと数時間で終わるという時間。

 はたけカカシは木ノ葉バレエ・アカデミーの奨学生寮にいた。
 正確には、寮の裏手に止めた真っ赤な跳ね馬マークのツーシーターの愛車の中で、寒さに震えていた。

 それもこれも、ひとえに愛ゆえ……と本人は思っているあたり、アレである。

「あー、はだみず、でそ……」

 呟いて鼻をすすると、本当にずずっと音がした。

 このまま、ここにいては確実に風邪をひく。
 けれど、ここでおとなしく待っていなければならない。

 それにカカシの愛車は恐ろしく騒がしい。
 今から移動しては、エンジン音で気付かれてしまう。
 エアコンをつければバッテリーはあがる。
 このご時世にアイドリングなどもってのほかだ。

「早く、きてよー。イルカせんせーい」
 
 そして、助手席を占拠するいくつかのプレゼントの包みといっしょに自分も寮に引き取って、あっためてくれないもんだろうかとカカシは思う。

───いんや、そりゃー無理かぁ

 出会ってすぐの自分でも赤面モノの会話以来、特別嫌われてはいないが、変人扱いされているのだ。
 いくら人のいいイルカとて、部屋へは上げてはくれないだろう。

───鈍感なうえに、天然の要害並にガード堅いしーぃ

 カカシとしては、本気で、イルカのことが好きなのだが。
 それが通じないし、信じてはもらえてない。

 まあ、出会いが出会いだったし。
 同性だし。
 自分だって、最初は信じられなかったし。

 好きだって気持ちは自分のものなのに、思うようにならないから厄介なんだなと、26歳にしてカカシは悟った。
 そして、自分の気持ちには素直になることにした。

 けれどきちんと好きだと言い、お付き合いを申し込んだら、変人扱いされた。

「イルカ先生〜、寒いよー」

 身も心も。

 その時、誰かが車の脇に立った。

 誰かすぐに分かったカカシがドアを開け、顔を出す。

「カカシさん」

「イルカ先生〜、寒いデス〜!」
 
 わざと鼻をすすってみせると、本当に申し訳なさそうな声が返る。

「すみません、お待たせしちゃいましたね……」

「いぃえぇ、勝手に待ってただけなんで〜」

「でも、お願いしたのはオレですから……。ありがとうございます、変なこと頼んでしまったのに、待っていて下さって」

「いいえ〜ぇ。それよりこれ、早いトコ配ってやってくださいよ」

 そう言って、助手席に積んであった幾つかの包みを渡してやる。

「すみません、ありがとうございます。カカシさん」

 イルカの笑顔に、カカシの心が温かくなる。

「本当にありがとうございました。もう遅いですから、気をつけて帰ってくださいね」

「……はい」

 やっぱりね。

「あ、そうだ。カカシさん。これ、貰ってください」

 イルカが押し付けるように柔らかな包みを渡してくるので、思わず受け取ってしまった。

「メリークリスマス、カカシさん」

 ぺこりと頭を下げ、イルカはカカシに預けていた奨学生たちへのクリスマスプレゼントを両腕に抱える。

 毎年、木ノ葉バレエ・アカデミーは団長の意向で寮管のイルカが事前にまとめて購入したプレゼントが奨学生たちに配られる。
 だが、毎年のこととなると、勘のいい子供がプレゼントを見つけ出してしまうらしい。

 その対策としてイルカは当日まで知り合いに子供たちへのプレゼントを預けていたが、今年はカカシが(下心もあって)自ら預かり役を申し出たワケである。

「ありがとうございます。イルカ先生も、よいクリスマスを」

 貰った包みを掲げ、カカシは微笑む。
 今年はこれで子供たちにサンタクロースを譲ってやることにしよう。

「おやすみなさい、イルカ先生」

「おやすみなさい、カカシさん」

 微笑んで帰っていく子供たちのサンタクロースは気付くだろうか。
 あの包みに、自分宛のプレゼントが紛れていることに。

 そして来年こそは、独り占めさせてくれるだろうか。

 
【続く】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2005/12/24
UP DATE:2005/12/24(PC)
   2008/12/01(mobile)

 
君は僕の輝ける星

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