カカイル

□君は僕の輝ける星
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君は僕の輝ける
 
番外編 君は僕の輝ける星、のハズ…



「もうすぐ、お誕生日ですよねー」

 仕事帰りに嬉々として声をかけてきた男は、たしか昨日ロンドンで公演していた世界的バレエダンサーだ。

 明らかにイタリア製と分かる───日本人にはかなり理解に苦しむデザインのシャツとスーツを無駄にセクシーに着こなし。
 何気ない立ち姿すらファッション誌のカヴァーモデルかと見まごうその男。

 名を、はたけカカシという。

 けれど、話し掛けられたうみのイルカは脳内処理が追いついていない返事しかできない。

「はあ」

 何故、赤の他人の誕生日を知っているんだろうという疑問。
 そして、なんで突然、この人がここに現れるのかという事実。

 その他、色々と複雑な感情が交錯し、軽い混乱状態に陥っていせいで。
 
「あの、それで……」

「それでですねー。プレゼント代わりに、今年はヴァカンス、一緒にいきましょーね」

「はぁっ!?」

「オレ、頑張って休暇取ったんでーすよー。イルカ先生のお誕生日の前日から、1ヶ月ー」

 イルカが驚くのが狙いだったカカシは鈍いリアクションを気にすることもなく、ベラベラと話し始める。

「ま、当日はイチャイチャするとしてーぇ。どこ行きます? セブとかバリ、ああ、ニースもいいですよねー。あ、避暑地がいいなら、スイスとかコモとかー。カナダやオーストラリアも悪くないなー。もちろん、ホテルはスイートとりますからねー。飛行機もファーストですよー」

 次々とでてくるふた昔前のバブリーな単語に、ぷつりと何かが切れた。

「……行ってられると、思いますか? オレが、1ヶ月も……」

 カカシと同じくダンサーを生業としているものの、イルカは小学生や奥様相手の雇われバレエ講師。

 自分の誕生日からの1ヶ月というのは当然、休みではないし、暢気に休暇を楽しめるような時期でもない。
 この春から通い始めた練習生たちがレッスンに慣れてきて、最初のつまづきが見え出す大事な頃だ。
 
 第一、1ヶ月も豪遊してられる金銭的余裕は悲しいがこれっぽっちもありはしない。

「行くなら1人で行きやがれ。こっちは休みなんかねえんだよ。土産は期待しておいてやる」

 渇いた笑顔でぼつりと呟くだけ、イルカは立派だ。

「えーっ! 折角のイチャパラ旅行なんですよーっ! ってゆーか、オレ1ヶ月も一人にしとく気ですかっ」

 淋しくってイルカ欠乏症で死んじゃーう。

 そう叫んでブリッコポーズで抱きついてくるカカシへの遠慮や容赦を、当然イルカは持ち合わせていない。

「……知るかーっ!!!」

 キラリと空に星が1つ、輝いた。

 
【続く?】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2006/05/04
UP DATE:2006/06/01(PC)
   2008/12/01(mobile)
 
 
君は僕の輝ける星

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