カカイル

□君は僕の輝ける星
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君は僕の輝ける
 
5 天体観測
〜 Astronomical Observation 〜



 ヨーロッパがバカンスに入り、アメリカが独立記念日に沸き返る頃。
 はたけカカシは、やっとの思いで帰国した。

 思えば、イースターに思わぬ誤解から、思い人と拗れて早3ヶ月。
 バレエダンサーとしての忙しさに追われて、関係修復どころか言い訳の1つも出来ずにいる。

 これではイカンと一念発起し、かなりの無茶を通して帰国の段取りを整えた。
 人間、やってやれないコトはないんだなと今更ながら実感しつつ、カカシは帰国したのである。

 日本へ。

 いや、木ノ葉バレエ・アカデミーの講師、うみのイルカの元へ。


 

 
 数ヶ月留守にしていた自宅マンションへ荷物だけを置き、カカシは愛車を駆ってアカデミーへ向かった。

 表向きはスケジュールの報告と確認。
 だが、本当の目的は違う。

 アカデミーの講師と寮管を兼任するイルカ。
 彼に会うには、アカデミーへ行くのが最も確実だ。

 音高くタイヤを鳴らしてアカデミー前へ車を止めたカカシの眼に、恋焦がれた姿が飛び込んでくる。
 見習クラスの子供たちとアカデミー入口脇に飾られている笹を囲んでいたのは、間違えようもないイルカだった。

 かなり乱暴な運転で近付く車の音に、子供たちが飛び出さないよう気を配っていたのだろう。
 こちらを見ていたイルカも、カカシの車に気付いているようだ。

 どうしようかと一瞬悩み、カカシは出来る限り丁寧に、車を地下駐車場へと進める。
 いつもならそのままオフィスへと上がっていくところを、わざわざ正面玄関へと回った。

「こんにちは、イルカ先生」

 にこやかに挨拶をするのは、子供たちの手前、無視はされないだろうという安心感からだ。
 と、いうか、この状況でなんの反応もなかったら、流石にカカシもへこむ。

「……ご無沙汰、しています……」
 
 ぎこちないが、それでも数ヶ月ぶりのイルカとの会話。

 思う様堪能したいところではあるが、2人の周囲を幾重にも子供たちが取り囲んでくれていて、幸せに浸るどころではない。
 それに、気になることもあった。

「ええっと、ナニをされているところ、なんでしょうか?」

「は? ナニって七夕、ですけど……」

「たなばた、ですか?」

 オウム返しに呟いて小首を傾げるカカシ。
 その姿に、イルカは察して補足する。

「昔からの風習ですよ。7月7日に文字とか裁縫が上達するようにって書いた短冊……この紙を、こんな風に笹に下げて願うんです」

「へえ、そんな風習があったんですか〜」

 どれどれと子供たちをかき分け、子供たちが下げた短冊を覗き込む。

 こんな人目につく場所にあるのに見られたくないのか、何人かがカカシを阻もうとする。
 けれど、そんな恥ずかしがり屋の子供たちの抵抗はささやかで、それすらも微笑ましくなるばかりだ。

 ただ、短冊に書かれた願い事に、カカシは首を捻る。

「イルカ先生、この願い事って……」
 
 
write by kaeruco。
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