カカイル

□天使のような悪魔
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天使のような悪魔
〜 Devel like Angel 〜
 
2:復讐LOL(笑)



 カカシの部屋に突然現れ、悪魔だというイルカはにこやかに語る。

「そんなに構えないでくださいよ。あなたはオレに愚痴でも言って、俺がその報酬を受けるだけなんですから」

「……悪魔に報酬払うってだけで、普通はビビルでしょ」

 警戒するように口元を手近にあったネックウォーマーで覆い隠し、カカシはイルカを見上げる。

「だって、よくいうじゃない?」

 悪魔と契約すると死後に魂を渡さないといけないって。

「そんなもの、いりませんよ」

 けろっと言い放ってから、ついでのようにイルカは訂正する。
 あなたの魂に価値がないということではなくてですね、と。

「オレは、そこまで重い望みを請け負うほどの悪魔じゃないんで。それに、あなたの悩みも魂を掛けるような深刻なものじゃないでしょう?」
 
 人の悩みも深さもそれぞれですし、他人には些細と感じられるようなことも当人にしてみれば命をかけてもいいということだってあるのは分かっています。

「けれどあなたは、何らかの手段であなたを傷つけた女性たちを見返すか、そんな思い出を忘れるくらいの幸せを掴めればいいんじゃないんですか?」

「うん」

「でしたら、本当に些細な代償でいいんです。もちろん、それはあなたにしか購えないものになりますけどね」

 悪魔は願いや望みに準じただけの報酬を、過不足なく受け取るんです。

「大それた願いにはそれだけの代償を要求します。それこそ、人の魂のような、ね。けれど、時には心からの感謝の言葉1つで充分なんですよ」

 簡単に解説された報酬システムに、カカシは不思議そうに訪ねる。

「へえ。悪魔って、欲ないの?」

「程ほどには。まあ、人間の強欲さに恐ろしくなることはあります」

「だろうねえ」

 イルカの冗談めかした言葉にカカシは苦く笑うしかない。

 それなりに人間社会で過ごしていれば、どれだけ人間がみっともない生き物か分かる。

 大それたことはやってくれるらしいが、それは結局人間が望むことなのだ。
 
 そして、準じるだけの報酬しかとらないという悪魔の論理にはちょっと頭が下がる思いがした。

 悪魔だというイルカだが、最初の爽やかで誠実そうな印象のまま、カカシの目には映っている。

 いや、今までであった誰よりも、親しみを感じていた。
 できるなら、彼みたいな友人がいればいいだろうとさえ思う。

「さて早速、仕事に取り掛かりましょうか。あなたの悩みは女性が苦手なこと、でしたね」

 だが、カカシの思いを知らないイルカはさっさと話を進める。

 考えてみれば、悪魔のイルカにとっては仕事なのだ。
 そのことに思い至って、何故か不快に感じたカカシはわざと気のない返事をする。

「はあ」

「どうします?」

「どうって……」

「解決方法は幾つかありますよ。あなたがこれまで傷つけられてきた女性たちへの復讐方法は」

 あくまでもさわやかに、イルカは物騒な言葉を口にする。

「復讐って、そんな大げさなことはいいよ。ただ、今日みたいなのは二度とゴメン」

「ああ、あれは酷いですもんねえ」

「知ってるの?」

「はい。依頼者のことは全て」

 最初にイルカ自身がそう言っていたことを思い出す。
 
 
write by kaeruco。
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