カカイル
□天使のような悪魔
4ページ/7ページ
自分の舌を他人の舌が舐め、吸い上げる。それが思いのほか気持ちがいいのだと初めて知った。
唾液を啜られる感触と音に脳が弾けたような衝撃を受け、そこから先、何が起こったのか分からなくなった。
口付けから開放されても、カカシはまだキスの余韻の中にいる。
「これが契約の証。オレの名前はイルカです。よろしくお願いしますね、カカシさん」
再び、そっと寄せられた唇は触れただけだ。
けれど、その一瞬の柔らかな感触で一挙に現実へ引き戻される。
今、自分は目の前の男に唇を奪われ、口腔内を蹂躙されたのだと。
「……ファッ」
───ファーストキスだったのにっ……
叫びは心の中でだけ、響いた。
イルカの人差し指1本が唇に押し当てられているだけなのに、声がでない。
「こんな夜中に、ご近所迷惑ですよ」
にやりと今まで見せたことのない、影のある笑顔をイルカは浮かべていた。
たが、清廉な印象ばかりだったこの男にその笑みは存外、似合っていることが恐ろしい。
「……この、悪魔っ」
「初めからそう言ってるじゃないですか」
カカシの罵りに、しれっと答える表情は、最初に見せた人のよさげなものだったけれど。
【続く】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]
WRITE:2006/03/25
UP DATE:2006/03/29(PC)
2008/12/21(mobile)