カカイル

□カカイル100のお題
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カカイル100のお題
 
007:一つの灯り



 任務を受領したり、報告書を提出する受付所に部下を連れて行くと、それぞれ全く性格が違うくせに3人共が同じ反応を見せるから面白いものだとカカシは感心する。

 入室した彼らが最初に見るのは受付に座る人員で、そこに見知った顔があれば安堵した顔つきを見せ、当然のようにその人の前に並んだ。

 逆に姿が見えなければ、どこか淋し気な、拗ねたような態度を見せる。

 何かとませた言動をとりたがるサクラや、あまり他人と関わろうとしないサスケですらそうなのだから、思い立ったら突っ走るナルトに至ってはいわずもがな。

 その人と行きずりに出会えた時など、飼い主に駆け寄る犬のようだ。

「あ、イルカ先生だってばよっ!」

 夕方の商店街という人混みの中で小柄なナルトがどうやって見透したものか、と思考するカカシに答えはすぐに示される。

 ナルトの駆け出した先の人並みが不自然に途切れ、足早に歩いていたその人までの道が開けていく。
 
 なるほど、里の人々にとってはまだこの子供は忌避すべき対象か、とため息。

 だが同時に、里中から忌まわしいものとされる子供を屈託なく受け入れる者がいるのも確かで、飛びついて来るナルトを嬉し気に受け止めたイルカは眉を顰める周囲を気にもしていない。

 それよりも久し振りに会う元教え子を案じるように頭を撫で、目を合わせて語りかけていた。

 多分、どうしてここに、と問うたのだろうイルカへナルトがこちらを指差すと、彼も視線を上げる。

 1日かけて農場の手伝いをしてヘトヘトになっているサスケとサクラを見て懐かし気に微笑み、任務中のチームを抜けて駆け寄ってきたナルトの頭を軽くはたきつつ、カカシへ向けて軽く会釈をして歩み寄ってきた。

「任務帰りですか? お疲れさまです、カカシ先生」

「いえいえ。先生こそ、お仕事帰りですか?」

 引き連れてきたナルトをカカシの背後でへたり込みそうにしている部下の列へと押しやったイルカはナルトを窘める。

「ナルト、報告書を出すまでが任務だって教えただろ。それまでは隊長の支持に従い、チームを離れないこと!」

「わ、分かってるってばよーっ! でもっ」
 
「サクラもサスケも任務中の体力配分まで気を配れるようにならなきゃ、今より高ランクの任務は割り振れないからなー」

 喚くナルトを無視して、誰もが褒めそやす優等生2人を煽るような事を言いながらイルカは2人の頭を撫でた。

「お前らは優秀だし、凄い上忍師についてるんだから、もっとやれるって信じてるぞ」

 カカシがしたら髪が乱れるだのセクハラだの言いそうなサクラだけでなく、子供扱いするなとその手を容赦なくたたき落とすであろうサスケまで素直に彼の手と言葉を受け入れているのは、何故なのか。

「オレもっ、イルカ先生、オレもだよなっ!」

「そうだな。でも、まずお前はきちんと任務を終わらせるのを優先してくれ」

 じゃれつくナルトを容赦なくひっぺがし、イルカはカカシへ向き直る。

「任務途中に失礼しました。では、引き続きこの子らをよろしくお願いします」

 きっちりと礼をし、速やかに雑踏へ紛れ込んでいったイルカの背中を先程まで疲れた顔をしていたはずの子供らが明るい表情で見送っていた。

 ナルトだけでなく、教え子たちの胸に最初の『火の意思』を灯すのが彼の役割なのだろう。
 
 まだ火種のそれを弊えさせるか、里を照らす程に育てるかはカカシの役目だ。

 まるで、道標だな、と不意にカカシは思う。

 子供たちだけでなく、自分にとっても、と。

 
一つの灯り───
───道標と、いつかたどり着くところ 

【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2015/12/26
UP DATE:2016/12/18(mobile)

 
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