カカイル

□カカイル100のお題
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カカイル100のお題
 
001 忍というもの



 木ノ葉の里が誇る忍、はたけカカシ。

 彼は生まれて初めて、忍者アカデミーの授業を覗いてみる気になった。

───さーて、イルカ先生の授業、見せて頂きましょーうか

 心の中で呟いて、カカシは教室中が見渡せる近くの木の枝に陣取る。

 もちろん、気配は完全に殺して。


 * * * * *


 教壇に立っているのは中忍、うみのイルカ。

 この度、カカシが初めて上忍師として受け持つことになった下忍たちの元担任である。

 彼から教え子たちの様子を聞きだすために、話をしてみたいとは思っていた。

 カカシが受け持つこととなった、うずまきナルトがやたらと男の名──イルカ先生を連呼し、春野サクラ、うちはサスケも彼を気に入っている様子だった。

 能力と経歴は資料と噂である程度は分かっている。

 だが、どんな先生かに興味があった。

 自分自身の目で確かめてみようという、気まぐれもある。
 
 多くの教え子に慕われ、特にナルトという特殊な事情を負った子供に多大な影響を与える、イルカ先生という存在に。

 それはカカシ自身の師への憧憬と重なっていたかもしれない。

───ま、流石に先生と比べちゃ酷ってもんデショ

 カカシの師は4代目火影だ。

 片や、しがない中忍のアカデミー教師。

 こうして教室のすぐ近くに上忍が一人隠れていても気付かぬ程度の。

───それでも一応、先生らしいかなー

 教室にいる十数人の忍者志望の子供たち。

 一人一人の様子に、イルカは気を配っているようにみえた。

 カカシにしてみれば、子供たちはただのガキの集団。

 だが、やはり多少なりとも忍術の心得もある子供──忍者候補生だ。

 イタズラにしても、ただで済まない。

 そんな子供たち十数人を相手にしているイルカを、多少は尊敬しないでもない。

 しかも、イルカの授業は分かりやすい。

 一見、簡潔。
 脱線もする。
 普通の授業だ。

 話し方も声も、板書の文字もパキパキと、元気がいい。
 話は面白おかしくあちらこちに飛びながら、全ての要点をまとめると肝心な部分が見えてくる。
 
 ついていけない子供でもとにかく頭の片隅に焼き付けてさせ、肝心な時に連鎖的に必要な知識が思い出せるような、そんな話し方をしていた。

───なるほどねー
 これならナルトでも聞いてられるか

 ただ聡くて勘も良く、己に必要と自分が判断した部分にしか興味を示さないサスケのようなタイプには向かない。

 自分だったら、とカカシは思う。
 イルカの授業を退屈そうに聞き、やがて寝てしまう子供が安易に想像できた。

───おっ?

 後の席で相談している者と、前に船を漕ぎだした生徒がいる。

 イルカは説明をしながら板書しようと、生徒たちに背を向けた。
 同時に、教室の最後尾で脱走のタイミングを見計らっていた子供たちが引き戸へと手をかける。
 途端。

「……〜ぅ、なにをやっとるかバカ者〜〜〜っ!!!

 大喝一声。

───……すーっんごい、バカ声……

 教室の外で、両耳を押さえながらカカシは毒づいた。

 静まり返るアカデミーに、イルカの怒声だけが響き渡る。

「授業中に教室を抜け出して、どこへ行こうってんだ?」

 徐々に聴力を取り戻すカカシの耳に、ざわつく音とかすかな笑い声。
 
 
write by kaeruco。
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