カカイル
□カカイル100のお題
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「お前ぇ、今日、居眠り何回目だ?」
両隣だけでなく、アカデミー中の教室から押し殺したような笑いが、呆れたようにまたイルカかと呟く声が漏れている。
カカシの知らない、気の抜けるような日常だった。
その中心に、イルカはいる。
平和で穏やかな空間の真中に。
───それって全っ然、忍らしくないんデスケド……
だが、カカシは知っている。
そんな風でいて、誰よりも強かった忍を。
あの人は──先生は忍として強いから忍らしくなく見えるのだと、あれはポーズなのだと、カカシは思っていた。
曝されている顔が本当の顔とは限らない。
素顔に限りなく近い仮面もある。
忍だけではない。
全ての人間がそうだ。
イルカも、そうなのだろうか。
子供と接しやすい凡庸な中忍に、隙の多い人間に見せている、だけ。
───……な、ワケないよ……アレは思いっきしド天然だわ……
忍者は裏の裏を読め。
そう教えてくれた師には裏も表もなかった。
恐ろしく分かりやすいけれど、決して心の内を明かさなかった師。
悲しみも苦悩もたった1人で解決し、笑顔しか見せなかった人。
忍びとして最強。
それ以上に、忍である前に強い人間だった。
───……なーぁんで、そんなトコ似てんのヨ……アンタが……
バリバリとカカシが頭を掻いていると、アカデミーにチャイムが鳴り響いた。
子供たちは歓声をあげ、教師たちの指示と号令を促し、教室の外へ飛び出していく。
今日の授業はこれで終わりなのだろう。
カカシの足元を、子供たちが足早に駆け抜けていった。
教室に1人残ったイルカは、教室の隅々をチェックしている。
たぶん、何かの術式が施されているのだろう。
万が一の時、1人でも子供らを守れるよう。
───ふぅん……、先生はタイヘンだー
他人事のように、カカシが思った時だった。
ふいに、視線があう。
イルカと。
───えっ?
カカシは驚いたが、イルカは動揺もせずに微笑んで、軽く会釈をした。
そのまま教室を出て行ってしまう。
「や〜れやれ、参ったねえ。バレてやんの……」
きっと、イルカは知っていたのだ。
そして敵ではないと判断し、放っておいたのだろう。
流石に中忍、というところか。
───ま……、ごーかっく だぁね、イルカせんせーも
面白い。
カカシは思った。
この気持ちが、どんな未来をもたらすかは、まだ誰にも分からない。
忍びというもの───
───忍びとして、人として
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2004/11/10
UP DATE:2004/11/11(PC)
2009/01/02(mobile)