カカイル
□ちいろの海
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ちいろの
海〜 Seas of Fathomless 〜
6 追憶海岸 大人しかいない。
里の外れに設営され、夜の闇と木々の陰にささやかな明かりを灯す作戦部本営の天幕。
まだ子供の身体つきをしたカカシも、立場的には既に大人だ。
忍びの里である木ノ葉隠れにあって、上忍という地位を持つ以上。
「他に出られる者はいないのかっ!」
作戦部副長の叫びに答える者はない。
いや、応える者はいても、彼らを出すことができない。
残されているのは、歳若い忍びたちだ。
それと日向、うちは、油女といった血継限界の貴重な血を持つ一族の者たち。
最後の里の守りを──事後の復興までを任されている立場だ。
それが生き残らせる名目だと分かっている。
この災厄から再び立ち上がるために、今は伏して待っているしかない。
理不尽で残酷な希望を託され、歯を食いしばって世が明けるのを彼らは待っている。
そこへ、情報を集めてきた者が息せき切って駆け込んでくる。
「自来也様、見つかりました! 短冊街にいらっしゃるそうです!」
「駄目だ、間に合わん!」
騒ぎに気付いていれば、とっくにこちらにきている。
きっと女と寝てるぞ。
それじゃあ朝まで戻らんな。
頭を抱える作戦部の姿に、絶望的な言葉がざわめきもれた。
大人たちが右往左往する姿に嫌気がさしたか、おとなしく傍観していたカカシが手をあげる。
「オレ出ましょーか?」
「お前は黙ってろ。頼むから」
「いや、ちょっと手貸して」
突如、別のところから掛かった声に誰もがそちらを向いた。
作戦部の中には、こんな時にふざけたことを、と半ば憤慨して。
しかし、その人の姿を認めた途端に全員が姿勢を正す。
「火影さま!」
「4代目!」
あちこちから起こる声に応えて手を上げ、ゆったりと歩み寄る人をカカシは見上げた。
炎の意匠を施した長羽織りと忍び装束。
そんな物々しい出で立ちに似つかわしくない穏やかな微笑み。
夜の闇にあっても輝くような金の髪。
そして、誰よりも強い忍び。
4代目火影だ。
「カカシ、いいね」
「はい」
何をとも問わずにカカシは頷いた。
付き合いは短くない。
4代目火影の為人はよく理解しているつもりだ。
「じゃ、ちょっと借りてくね」
一言で作戦部を黙らせ、歳若い火影はまだ子供の上忍を連れ出す。
2人は天幕を出たところで、飛んだ。
示された方向へカカシも忍の足で向かう。
「先生、何が……」
「何が起こってるかは、分かってるね?」
「はい」
見上げた空には高い位置へ満月が昇っている。
血のように赤いのは微細な粉塵が舞い上がって月光から赤以外の色彩を遮っているからだ。
「……ちょっと面倒なことになってるけど、心配しなくていいよ」
「ちょっとですか?」
移動しながらの会話だが、2人の声に緊張感はない。
それでも鋭い感覚が凶悪で強大な力の奔流を感じ取っていた。
「ん。だいぶ?」
足を止め、4代目火影は前方を見据える。
大勢の忍者が布陣する丘を越え、森の向こう。
「……九尾」
9つの尾を振るい、月へ噛みつかんばかりの咆哮を上げる禍々しい獣。
次→write by kaeruco。
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