カカイル

□ちいろの海
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ちいろの
〜 Seas of Fathomless 〜

1 静かの


 木ノ葉崩し以降、火の国は敵対関係にあった周辺国の軍事的介入を受け、ところによって小規模な戦闘も起こった。

 小競り合い程度ではあったが、戦闘地域に暮らす人々にとっては戦争──命の危険に曝されることに、違いはない。

 火の国は外交力によって幾つかの戦闘を回避する一方で、ここぞという局面においては最大の軍事力である木ノ葉隠れの忍を惜しげも無く投入していった。

 大国の威信が揺るがぬよう──木ノ葉隠れが健在であると証明するために。


 


 火の国東海岸、その最北の地に木ノ葉隠れの忍3部隊が派遣されてから1週間が経とうとしていた。

 水の国から3隻の軍船で攻め寄せた霧隠れの忍は水際で撃退し続けてはいるが、上陸を許していないというだけで未だ撃退には至っていない。
 
 何といっても、海岸での戦闘では水遁に長けた霧隠れの者に有利であった。

 一進一退の膠着状態は今後もしばらく続くかと思われ、木ノ葉の里からは近隣の住民たちへ避難勧告を出している。

 だが漁民の多くは長年住み慣れた土地を離れる覚悟が出来ず、また避難民を受け入れてくれる土地もなく、とどまっていた。

 それゆえに、忍同士の戦闘に巻き込まれて命を落とす民の数は日に日に増えていく。

「やべえな、このままじゃ……」

 深夜、作戦本部としている番屋で周辺地図を睨みながら、猿飛アスマは咥えタバコのフィルターを噛み潰してうめく。

 沖に軍船3隻で陣取る霧隠れの忍は、木ノ葉隠れの忍と直接やりあっても消耗するだけと判断したのだろう。

 ここ数日で、作戦を変えてきた。

 戦闘地域とは言っても、この辺りは小さいながらも豊かな漁場に恵まれた漁村。
 今もこの地には、生きて生活をしている人々がいる。
 田畑を耕し、漁をし、糧を得る人々が。

 そういった者が、無差別に標的にされはじめていた。

 漁に出た者の首を落とされ、服を剥がれ、内臓を抉り出された遺体を乗せた小船が港に流れ着く。
 明らかな、見せしめだ。
 
 人々へは1人で出歩かぬよう伝えてはいるが、普通の人間が何人集まろうと忍には敵わないし、村人全てに護衛の忍がつくこともできない。
 いっそ一切の外出を禁じてしまおうという話もあった。
 だが、村人とて生きていくために危険だと分かって漁へでていく。
 その日、家族で口にするものだけでも確保するために。

「もう、長引かせらんねえぞ。どうする?」

 アスマは他の隊のリーダーへ視線を向けた。

「どーするって言われてもねー」

 椅子を跨いで座り、背もたれに肘をついた格好ではたけカカシはため息を返す。

「敵さんは遥か沖で、こっちから攻めていけないんだから、どーしよーもないデショ」

「だからって、敵さんらのお帰りを待ってるだけってのもねえ」

 周辺地図を広げた机の端に足をひっかけ、椅子ごと上体を反らして天井を眺めながら不知火ゲンマが呟く。

 木ノ葉屈指の実力者を投入しながら、1週間も戦局を動かせずにいた。

 すでに幾度か、漁民の姿で囮をだしている。
 けれど突然複数に襲われて手傷を負うし、対抗しようと変化を解けば向うはあっさりと引き下がる。

 その間に、別の場所で犠牲者がでた。
 
 解決方法はただ1つ、沖に停泊する霧隠れの軍船を追い払うことだ。

 しかし木ノ葉の里が持つ船では霧隠れの里の軍船には対抗しきれず、襲撃もかけられない。

 
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