カカイル

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ひをつける



 イルカが倒した6人の敵忍のうち、指揮官とおぼしき男だけは辛うじて生きていた。

 流石に上忍ともなれば致命傷は避けられたのか、それとも急所は外して攻撃していたのか。
 本人が黙っている以上、分からない。

 アスマは他に潜伏する者がいないか確認がてら、ガイの隊へ侵入者の状況を伝えにいった。

 残されたカカシの隊は捕らえた敵を引き渡す為、戦闘のあったこの場所で尋問部の到着を待っている。

 森の際で周囲を警戒しながらも身体を休めている中忍2人と離れ、カカシは戦場となった一角を見渡していた。

───見事なもんだ、こりゃ

 戦闘が行なわれた場所を取り囲んで円形に、あの体術の軌道が残っている。

 足場の悪い折り重なった倒木の上で、あれだけの敵を1人で相手にして、軌跡には少しの歪みも見られない。
 もし真上から確認できたら、きっと見事な新円を見出せる気がした。
 
 そしてその円に封じ込まれ、倒された敵の身体には無数の傷が見て取れる。

 止めは胸部に一撃。
 しかし、そこへ至るまでに動きを止め、目をくらます攻撃の細かい傷。
 それも、足にばかり。

───八方と頭上からあのスピードで、足と胸部を狙った打撃……

 決して狭くはないこの円内で、軌道に接した場所だけでなく中央にも戦闘の跡があった。

 つまりこの円……いや、半球空間全てが間合いなのだろう。

 取り込まれたら最後。
 逃げ場は、ない。

───並の上忍じゃ相手にならないな……

 カカシはこれまで生き延びてきた経験からか、考えるでもなく自然、対抗策をシミュレートしていた。

 火遁、土遁、風遁、水遁、影分身、口寄せ。

 あらゆる術を頭の中でぶつけてみるが、確実に逃れられるような術が見出せない。

 もしも1対1でなら、反撃のチャンスもないだろう。

───オレでも、無傷でいられない、か……

 そう思い至って、アスマの言葉を思い出す。

───イルカは強えぜぇ

 アスマはそう言った。
 その言葉通り、イルカは中忍にしては強いし、戦闘経験もある。
 
 しかしイルカの強さは危うさをも含んでいて、アスマはそれを知っていた。
 知っていて、案じてもいながら、きっと手が出せずにいるのだ。

 彼の危うさはナルトに、そしてきっと──今やイルカに次いで、ナルトと近しい存在となった──カカシに関わることで崩れていく。

 だからアスマは、イルカとカカシを組ませるべきか躊躇したのだ。

───まあ、意地張って独断先行すんのはともかく……

 背後に意識を向けて気配を探れば、2人の中忍の存在が手にとるように分かる。

 1人は軽傷を負って多少チャクラも減っているが、特に戦力として低下したワケではない。

 問題は、イルカだ。
 外傷もないから全く無事なように見せているが、カカシに誤魔化されてやるつもりはない。

 哨戒に出る前より、半分ほどのチャクラを使い切っているようだった。

───1回の戦闘であれだけ消耗しちゃうんじゃ、心配にもなるよな……

 あの特殊な分身術が原因というところか。

 普通の分身や影分身・水分身・砂分身といった術は、本体の姿だけを具現化したもので、能力は実際の1割程度にしかならない。
 
 
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