カカイル
□MISSING LINK
8ページ/45ページ
MISSING LINK
3 ひをつける イルカが倒した6人の敵忍のうち、指揮官とおぼしき男だけは辛うじて生きていた。
流石に上忍ともなれば致命傷は避けられたのか、それとも急所は外して攻撃していたのか。
本人が黙っている以上、分からない。
アスマは他に潜伏する者がいないか確認がてら、ガイの隊へ侵入者の状況を伝えにいった。
残されたカカシの隊は捕らえた敵を引き渡す為、戦闘のあったこの場所で尋問部の到着を待っている。
森の際で周囲を警戒しながらも身体を休めている中忍2人と離れ、カカシは戦場となった一角を見渡していた。
───見事なもんだ、こりゃ
戦闘が行なわれた場所を取り囲んで円形に、あの体術の軌道が残っている。
足場の悪い折り重なった倒木の上で、あれだけの敵を1人で相手にして、軌跡には少しの歪みも見られない。
もし真上から確認できたら、きっと見事な新円を見出せる気がした。
そしてその円に封じ込まれ、倒された敵の身体には無数の傷が見て取れる。
止めは胸部に一撃。
しかし、そこへ至るまでに動きを止め、目をくらます攻撃の細かい傷。
それも、足にばかり。
───八方と頭上からあのスピードで、足と胸部を狙った打撃……
決して狭くはないこの円内で、軌道に接した場所だけでなく中央にも戦闘の跡があった。
つまりこの円……いや、半球空間全てが間合いなのだろう。
取り込まれたら最後。
逃げ場は、ない。
───並の上忍じゃ相手にならないな……
カカシはこれまで生き延びてきた経験からか、考えるでもなく自然、対抗策をシミュレートしていた。
火遁、土遁、風遁、水遁、影分身、口寄せ。
あらゆる術を頭の中でぶつけてみるが、確実に逃れられるような術が見出せない。
もしも1対1でなら、反撃のチャンスもないだろう。
───オレでも、無傷でいられない、か……
そう思い至って、アスマの言葉を思い出す。
───イルカは強えぜぇ
アスマはそう言った。
その言葉通り、イルカは中忍にしては強いし、戦闘経験もある。
しかしイルカの強さは危うさをも含んでいて、アスマはそれを知っていた。
知っていて、案じてもいながら、きっと手が出せずにいるのだ。
彼の危うさはナルトに、そしてきっと──今やイルカに次いで、ナルトと近しい存在となった──カカシに関わることで崩れていく。
だからアスマは、イルカとカカシを組ませるべきか躊躇したのだ。
───まあ、意地張って独断先行すんのはともかく……
背後に意識を向けて気配を探れば、2人の中忍の存在が手にとるように分かる。
1人は軽傷を負って多少チャクラも減っているが、特に戦力として低下したワケではない。
問題は、イルカだ。
外傷もないから全く無事なように見せているが、カカシに誤魔化されてやるつもりはない。
哨戒に出る前より、半分ほどのチャクラを使い切っているようだった。
───1回の戦闘であれだけ消耗しちゃうんじゃ、心配にもなるよな……
あの特殊な分身術が原因というところか。
普通の分身や影分身・水分身・砂分身といった術は、本体の姿だけを具現化したもので、能力は実際の1割程度にしかならない。
次→write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]