カカイル

□MISSING LINK
11ページ/45ページ



MISSING LINK

ゆれるひかり



 イビキらが姿を消してしまうと、もうカカシたちは哨戒任務に戻るしかない。

 時刻はずいぶんと深くなってしまっているが、戦闘とその処理などがあったからまだ半分も進んでいなかった。

 このままでは夜明けまでに全行程を踏破することは難しい。

 こういった時のために、2隊に分かれて哨戒している。

 だからといって、いつまでもここにとどまっている理由などない。

 部下である2人の中忍はすぐにでも出発するつもりでいた。

 しかし、隊長であるカカシが指示を出さない。

 いや、出せずにいた。

「隊長」

 そう、声を掛ければ顔は上げる。

 が、カカシは動こうとはしない。

「どうかされましたか」

「……イルカ、先生」

 声をかけた者ではなく、その後ろに立つ男にカカシは問い掛けていた。

「どういう、ことですか……」

───アナタが暗部に加わる?
 
───アカデミーはどうするんです?

───子供たちや、ナルトはどうするんです?

 そんな問いかけは、言葉にはできない。

 けれど、きっと、イルカにはカカシの言いたいことが分かっている。
 それなのに彼は答えではなく、別の言葉を口にした。

「先行します」

「待ってよっ!」

 飛び去ろうとするするイルカの腕を、カカシはやっとの思いで掴んだ。
 とっさのことで、折れる寸前まで力をかけてしまったからか、視線が咎める。

 けれど声と表情にはわずかな苦痛も含ませず、イルカが問い返した。

「なにか?」

「アンタじゃないっ」

 カカシが話をしたいのは──問いかけているのは、この男ではない。

「イルカ先生と、話させてよっ」

「……私が、うみのイルカですが」

「違うっ! オレは、イルカ先生と話がしたいって言ってる!」

「だから」

「頼むから!」

 カカシには今のイルカの言葉を聞くつもりも、余裕もなかった。

 そのことを悟ったのか、わずかだが何故か悲痛そうな声で、イルカは言う。

「これが終われば、時間をとります」

 掴まれた腕を振り払おうともせず、イルカは視線をカカシの後ろへ促す。
 
 2人の動きにも会話にもついていけず、呆然とするもう1人の部下の存在をようやく思い出して、カカシもイルカの腕を掴む力を緩めた。

「……とにかく、任務を遂行してください」

 そう言われれば、カカシもうなずくしかない。

 身を翻し、哨戒任務へ戻るイルカを黙って見送り、カカシは大きく息を吐いた。

───……本当にオレが、あの人を引きとめられるのか……

 イルカは手強い。

 能力があるばかりでなく、気持ちが強いのだ。
 強情というのかもしれない。

 その上、相手は2人いる。
 どちらかが納得しても、もう1人がどうでるか……。

 それを考えると、カカシはため息しかでなかった。

───……どーしよ……オレ、ホントーに不肖の弟子だわ……

 ついさっき誓った、その決意が、もう揺らぎ始めている。

「……あの、はたけ、上忍……」

「なに? アンタは行かないの?」

 思考を遮られた不機嫌さを隠しもせず、カカシは問い返す。

「え? あ、はいっ!」

 慌ててイルカの後を追う中忍。

 その背後を警戒しながらついて行きつつ、少し釘を刺しておこうと思った。
 今夜のコトを吹聴させないためにも。
 
 
次→
write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ