カカイル

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こころ



「少し、昔話をして構いませんか……」

 カカシに抱きしめられ泣きつかれたまま、イルカは穏やかに言った。

「あなたも、覚えているでしょう? 12年前のことを……」

「……はい」

「そんな風にね、オレもずっと泣いてたんですよ……心の奥でね……」

「えっ?……」

 意外な言われ方をして、カカシは顔を上げ、イルカの顔を確かめる。

 いつもの受付で見ていたように穏やかだっだが、笑ってはいない。
 感情が抜け落ちてしまったような顔だと思った。

 その顔には見覚えがある。

 3代目火影の葬儀で、ナルトや木ノ葉丸に人の死について語ったイルカだ。
 辛いことに耐えているのでも、悲しみを堪えているのでもない、その顔。

「涙、止まりましたね」

 上忍の方が急に泣き出すから、オレが驚きました。

「ついでに、放して頂けると、気が楽です」

「あああぅっ、すすスミマセンっ、ついっ!」
 
 慌てて両腕を放す。
 だが今度はその両腕のやり場に困ったのか、あわあわと千手観音状態になるカカシ。
 見事な腕捌きの速度だがイルカには何の感銘も与えず、身体を放してただ話を先へすすめていく。

「オレは急に両親がいなくなって悲しいのと、ワケが分からないので、ただ泣いていました。けれど、アイツはそうじゃなかった……」

「はあ?」

「まだ下忍にもなっていないのに、ナルトを殺そうと大暴れしたそうですよ」

「……ナルトを……」

「ええ。ナルトには護衛がびっちりついてましたから、すぐにとっつかまって。火影様にも散々諭されました。けど、いい度胸してますよね」

 なんでもないことのように言い切られる言葉と、その語られる事実の衝撃に耐えるだけでカカシは精いっぱいだった。

 イルカからは絶対に聞かされることはないハズと思い込んでいた、ナルトへの憎悪は誰から聞かされるよりもきつい。

「度胸だけじゃどうにもならなくって。でも気持ちが治まるわけでも、納得できたわけでもないんです。とにかく、子供でしたから。それで、何も出来なくてただ悲しんでただけのオレと、交替したんです……」
 
「じゃあ、アナタは……誰だっていうんです?」

「オレも、うみのイルカには違いないでしょうね……。でも、やっぱり違う気がしますよ」

「違うって……」

「たぶんオレは12年前、便宜的に作られた人格、なんでしょう」

 うみのイルカが子供心に手に負えなくなった怒りや殺意を封じ込める為の、ね。

「オレの役目は終わったんです。だから、本当のうみのイルカが目覚められた」

 もう自分を偽る必要がなくなったんです。

「あなたのお陰ですよ。カカシさん」

「……オレ、ですか?」

「あなたがオレに、言ってくれたんじゃないですか」

 その言葉に、カカシは頭から冷水を引っ掛けられた気がした。

「ナルトはオレの生徒ではなく、あなたの部下だって」

 気がしただけでなく、一気に総身に嫌な汗が噴出してカカシの人より低い体温を奪っていく。

「それで気づいたんです。もう、ナルトを愛しているフリをしなくて、いいんだって……」

 イルカの安堵ともとれる言葉は、カカシの心を打ちのめしていた。

「うみのイルカとして、生きていっていいんだって……」

「……だから、暗部なんですか?……」
 
 
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