カカイル

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つながらない



 夜明け前の火影岩に2小隊──8名の暗部が集結していた。

 新人研修を兼ねた暗殺任務へ出発するためである。

 木ノ葉崩しで最も人員が減ったのは暗部だ。
 今や実力と希望があれば入隊できるようになっている。

 そして、以前所属していた者が暫定的に戻ることも増えた。
 だから新人としてイルカが、元・暗部としてカカシが加わっていることに、何ら不思議はない。

 例え今日の編成が5代目火影・綱手の協力を得たカカシによって仕組まれたことであっても。

「と、ゆーアレでー、よろしく。イルカせんせ」

「……こちらこそ。カカシ先輩」

 互いに暗部装束に身を包んで、面を被ってはいるが、相手を見誤ることはない。

 カカシはその特異な髪色もあって、面を斜めに──常と違い、顔の右側を覆うように引っ掛けただけで、自身の素性を隠そうとはしていなかった。
 
 逆にイルカは結い上げていた髪を解き、きっちりと面をつけている。

 何も知らずにこの姿を見れば、誰もこの者がイルカとは思わないだろう。
 しかし、カカシは今日のメンバーを自分で選んでいるし、イルカを含めた全員を見知っている。

 それに、髪を下ろしたイルカの姿を見るのも初めてではなかった。

「さーてと、そろそろ行こうか」

 カカシの声に全員が頷き、指示された者から無言で目的地へ駆け出していく。

「新人さんは、オレにひっついてなさいね」

「……はい」

 最後にしんがりとなって、カカシとイルカが暁闇の森へと、身を躍らせる。

 細い木々の枝、苔むした崩れかけの岩場などを抜けての疾走。
 だが、風がそよぐほどの揺らぎも残さずに、8人は駆けていった。


 


 目的地は小さな集落。

 表向きは、鉱山資源を採掘して加工し、農具や生活用品などを近くの里へ卸し、細々と生活している村だ。

 問題は、その卸先。
 農具に紛れ、裏で忍具・暗器と呼ばれる武器類を密造し、密かに音隠れへも流されているという。
 
 そして、採掘と加工の副産物。

「……川の色、変わっちゃってんじゃないの」

 唯一さらした左眼をしかめ、カカシは周辺を見渡す。

 掘り返した重金属混じりの土が流れ出し、川の色どころか水質を変えていた。
 そのせいで木々が立ち枯れ、嫌な臭いの風が吹いている。

 これでは、元に戻るのに時間がかかり過ぎるし、その間の下流域での影響は計り知れない。
 そしてその影響範囲内に、木ノ葉隠れの里もあった。

 けれど今の任務は、この元凶を取り除くことだけ。

 つまり、暗器類を密造する本拠地の壊滅だ。

 場所と、人の抹殺のみ。

 後のことは、彼らには知る由もない。

 任務以上のことは、要求されていないのだ。

 それでも何とかしたいのなら、任務の最中に個人の判断でなにかしらの偶然を装って、始末をつければいい。

 例えば土遁で地中深く、採掘され放置された土を埋め戻す。
 一時凌ぎにしかならないだろうが、それでもこのままにしておくよりは……。

 そんな考えに耽っていたカカシの傍らで、妙に渇いた、感情のこもらないイルカの声がした。

「時間です」

「はいはい。やーっぱ、マジメだね。イルカせんせーはっ」
 
 
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