カカイル

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わたしとわたし



───消してしまうんです

 そう言った、穏やかで強い意志のこもった声に、カカシは覚悟を決めた。

「ねえ、イルカ先生?」

 アナタ、オレに言ったよね?

「覚えてる? どんなことになっても、オレを信じてるって」

「ええ」

 イルカも分かっているのだろう。

 先程まで、カカシの問いかけに狼狽していた姿とは打って変わり、落ち着いた声で返してくる。
 縋るようだった右腕が、カカシにむけて構えられてもいた。

 イルカへ両手のクナイを見せ付けるように向け、カカシも宣言する。

「本気でやりましょうね」

「殺してくれるのでは?」

「ラクに死のうなんて思わないでよ」

 オレの手、煩わそうってのにさ。

「……このオレを、写輪眼のカカシを本気にさせておいてね……」

「光栄です」

 次の瞬間、カカシの殺気が周囲を制圧する。
 
 だが、その威圧を一身に受けているはずのイルカに変化はない。

 自身からは殺気も漂わせず、ただゆっくりと周囲の気配と同化してく。
 風に舞う、木の葉のように。

「……やっぱり、アンタとは、やりにくいね」

「今更ですよ」

「そーね。じゃあ、全開でいかせてもらおうか……」

 最初からこうするつもりで、チャクラを温存し、戦闘に参加しなかったのだから。

 カカシの写輪眼が、開く。
 イルカの動きを、術を、心を写し取る瞳が。

「無駄ですよ」

 その瞳を真正面から見据え、イルカは不敵な微笑を声に含ませる。

「今のオレを写しても、アナタが混乱するだけです」

「そうかもしれないけど、アナタ相手にコレ無しはキツイかなってねー」

 交わされる会話は穏やかだったが、そこにあるのは相手への殺意のみ。

 先に動いたのは、カカシだった。

《水遁・水龍弾の術》

 川の水を龍と化してイルカへ放つ。
 だが、手前で水龍は霧散した。

 一瞬で、2人の視界が霧に閉ざされる。

《水遁・漠霧散燥の術》

 それはチャクラを使い、周囲の空間から水を生み出して操る水遁の応用術。
 通常なら集めるべき水を、逆に周囲に霧散させる。

 通常の水遁に対すれば相手も自分も傷つかず、周囲への被害も最小限となる。
 そのせいで戦場ではあまり使われない。

 けれど、アカデミーなどでまだチャクラの安定しない子供が術を暴発させた時には、よく使われる術だった。

 つまり、イルカにとっては使い慣れた、得手とする術。

 水遁だけではない。
 火遁にも土遁にも、対処忍術は存在する。

 しかもこの術に、チャクラ量や術の強力さはあまり関係しない。
 アカデミー生だろうが、上忍であろうが、術の発動タイミングを見切られれば、全て打ち消されてしまうのだ。

 そう思い至り、カカシは肝が冷える。

───……もしかして、すっごい不利なケンカふっかけちゃった?

 徐々に晴れていく霧の向うから、2つの気配がする。

「気が散っていますよ、カカシ先輩」

「本気になってくれたのではないのですか?」

 2つの、声がした。

「……やべ……」

 身をかがめたカカシの頭上と、左わき腹を、イルカがかすめていく。
 先程の術の余波に呆然としている間に、鏡像分身の術で2人になったのだろう。

───くるっ!
 
 
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