カカイル
□MISSING LINK
21ページ/45ページ
カカシは身構える。
《竜飛双体・アギト》
2人のイルカが別方向から、似たタイミングで飛び込んでくる。
スピードのある重い一撃を受ければ、一度で足が止まるのは分かっている。
交わさなければ、と思う前にカカシの身体は動いていた。
鏡像分身のイルカに向けて、飛び掛るように。
「「甘い」」
しかし、それは互いに残像分身。
イルカの本体はカカシの影分身を、鏡像分身は水分身を打ち破っていた。
カカシ自身は、術の軌道から外れたところにうずくまっている。
「「流石ですね」」
イルカとカカシ、互いに同じお言葉を口にした。
「《竜飛双体》から抜けた人間は初めてです」
「それは、光栄」
「ですがこれは、どうされますか?」
2人のイルカが、互いの背後を守るように構える。
立ち上がったカカシに、イルカは襲い掛かった。
《竜飛双体・クウガ》
それは、カカシが見たことのない、これまでの竜飛双体とも比翼連理とも違う動き。
2人のイルカが入れ替わりながら、カカシへ向かってくる。
それだけでなく、どちらかは残像分身をも使っていた。
向かってくる気配は5つ。
どこから、どのタイミングで攻撃がくるのか、見当もつかない。
───クソッ! なんでこんな強いんだよ、この人はっ!
けれど、最終的な狙いは、1つだと知っている。
カカシは印を切り、右手にチャクラを集中していく。
《雷切》
正面からか、背後からか、イルカは必ず心臓への一撃を止めとしていた。
ならばその一瞬に、カカシは賭ける。
───……だいぶ、分の悪い賭けだが……、綱手サマよりゃ、マシ、デショ
カカシは静かに、その刹那を待つ。
向かってくる気配は5つ。
うち3つは残像。
1つは本体。
そして鏡像分身。
───狙いは……ここだっ!
「……ぐっ!」
「……くぅっ!」
振り向き様に繰り出した《雷切》──カカシの右腕は、イルカの胸を貫いていた。
驚愕と衝撃に震えるイルカ──その面は、鏡に映った像のように反転している。
カカシの左腕は、自分の胸を撃ったイルカの右腕を捕らえていた。
「……イルカ先生、つーかまえたっ」
にこやかに言うカカシの顔から、見る見る血の気が引いてゆく。
鏡像分身が消え、イルカの胸に血が滲んできていた。
どうやら分身が受けたダメージの一部が術を解除した後、術者にも返るらしい。
それでもイルカは、崩れそうなカカシを支えて立っていた。
「……どうし、て……」
「……だって、イルカ先生が、言ったじゃないですか……」
カカシは最初から、イルカ本体を捕らえることだけ考えていた。
流石に鏡像分身の一撃は凌いだが、残像分身からの攻撃は避けずに、敢えて受けた。
足には浅いが無数の傷が刻まれ、血に濡れてたようになっている。
そして本体の攻撃も──急所だけは絶妙に外し、自身の胸で受け止めた。
顔の半ばを覆っていた口布を引き下げて血の固まりを吐き出し、カカシは微笑む。
「……ぐっふっ! ね、言った、デショ……」
血に濡れたカカシの微笑は優しく、凄絶なものだった。
「……例え、どんなことになっても、オレを、信じるって……」
それはイルカが、カカシに全てを託した言葉。
けれど、こんな結末を望んでいたのではない。
「……イルカ、せんせぇ……」
イルカの右腕を掴むカカシの左手から急速に力が失われていく。
けれどカカシは右腕でイルカの肩を引き寄せ、自分の胸に抱きこんだ。
「……オレも、アナタを、信じてます……」
オレだけ、じゃなく、みんながね。
「……アナタは、ちゃんと……ここに、いますって……」
そんなカカシの声に答える言葉を探せず、ただイルカは彼を支える力を強くする。
そしてまるで、何かを象徴するように、イルカの面が落ちていった。
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]
WRITE:2004/11/15
UP DATE:2004/11/15(PC)
2009/01/29(mobile)