カカイル

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 長い間、ナルトはなかなか卒業できず、カカシも部下を持てずにいたけれど。
 いつの日にか、イルカからナルトを引き継ぐ為に。

 それが自分に出来る償いだと思っていたけれど、そうじゃなかった。

 カカシ自身がイルカとナルトとの関わりを作る為だった。

「オレは、アナタを、失いたくない……」

 幸せになるために。

 人は生きていくのだ。

 どんなに、悲しいことや、辛いことがあっても。

「ここに、居て……イルカ先生」

 誰かを傷つけながら。

 誰かを大事に想いながら。

「オレの傍に……ずっと居てよ」

 ナルトも、カカシも、イルカも、皆。

「カカシさん、オレ……オレは……」

「アナタもオレも、もちろんナルトもさ……」

 これから、生きていくんだ。

 そして。

「……幸せに、なるんだ……」

「オレは……」

「それを認めて、許してやれるのは……誰でもない、オレたち自身ダケ、デショ……」

「……オレ、が……」

 カカシの手がイルカの頬を包む。

 互いの顔を、瞳を見つめあった。

「……認めてあげてよ、イルカ先生」

「……オレを?……」
 
「12年もたった1人で頑張ったアナタを」

 ナルトを育んだ、優しくて厳しいイルカを。
 ナルトを憎んだ、脆くて強いイルカを。

「許しても、いいんですか……」

「……いいに、決まってるデショ」

 カカシの腕がイルカの顔を引き寄せる。

「オレが大好きな、イルカ先生なんだから……」

 唇が軽く触れ合った。

「……ずっと、オレと一緒に、生きて……」

「カカシさんっ!?」

 イルカに圧し掛かる格好で、カカシの体から力が失われていく。

 冷えていく身体を抱きしめて、その名を叫んだ。

「カカシさんっ!」


 


 夜空に、撤退を告げる閃光弾が上がった。

 それを確認するまでもなく、イルカは意識のないカカシを背負って里へ向かう。

 里までは全速で駆けて四半日。

 けれどそれは自身1人の場合。

 カカシを背負っていては半日かかるかもしれない。

 それまで、持つかどうか……。

───生きるって言ったでしょうっ!

 心の中で叱咤しながら、イルカは足にチャクラを込める。
 
───オレに一緒に生きてって言っておいて、遺していくつもりですか!

 しばらくすると周囲に同行していた暗部の気配が追いついてきていた。

「隊長が重症ですっ! 先行して、里に知らせてくださいっ!」

 了承したのか、3名が速度を上げる。

 残る者が2人を気遣うように、前後を守ってくれた。

 速度を緩めなくてもいい安定した足場や、里への最短ルートを辿っていく。

 彼らは何も言わず、何も聞かない。

 あの場に、カカシをこうまで傷つけられる者はいなかった。

 イルカ以外には。

 それなのに、誰も。

 きっと初めから、分かっていたのだ。こうなることが。

 カカシがそうしたのだろう。

 イルカのために。

───カカシさんっ!

 背中で感じる温みと拍動、そして微かな吐息。

 まだ死に逝く者のそれではないが、決して安心はできない。

 それを考えると、視界が滲みそうになる。

 けれど、泣いてはいけない。

 泣くものかと、イルカは目を凝らす。

───どうか、生きて……

 この人が無事だと分かったら、泣けばいい。

 カカシが好きだと言ってくれた、うみのイルカとして。
 
 1人の、人間として。

 
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2004/11/16
UP DATE:2004/11/16(PC)
   2009/01/28(mobile)

 
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