カカイル

□MISSING LINK
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DOMINO THEORY

─── あなたと、



「いってらっしゃい、イルカ先生」

 自分を送り出してくれる人がいるのは、いつ以来だったろう。

 そんなことを考えながら、イルカはカカシの病室を後にした。

 扉を締めたとたんに全ての気配を消していたのは、忍としての習い性。

 けれど、そのまま動けずにいたのは──離れがたかったのは、自身の気持ちだった。

 これまではアカデミーでも任務でも、送り出す側だったイルカ。
 こうして任務に出るたび、誰かに背を向ける瞬間に、送られる気持ちをも思い知る。

 そして、自分が2つの顔を持って生きていることも。

「それでもオレは、アナタを……」

 弱くなりそうな気持ちを押し切って、立ち去ろうとした耳に優しい声が聞こえた。

「アナタの手を、決して離したりしませんから」

 病室で1人、語りかけるカカシの言葉。
 
 それが誰に向けれられたものか、イルカは分かっている。

「ずっと、繋いでいます」

 その言葉通り、いまだ右腕にはあの時カカシに掴まれた痕があった。

 自身の腕に残されたカカシの思いに唇を寄せて、イルカは心で呟く。

───行ってきます、カカシさん……

 そして顔を上げ、気配も足音も立てずに立ち去った。


 


 イルカが到着すると、集合場所にはすでに3人の忍が待っていた。

「お待たせして申し訳ありません。遅くなりました」

「いいや、時間どおりだぜ」

 見知った顔がにやりと笑って出迎える。

 今回の任務は隊を率いる上忍として猿飛アスマ、そして見知った顔の中忍が2人、それにイルカの4名で1隊となる。
 任務内容は、要人警護。
 ただし、確実に敵との接触──戦闘のある。

「イルカ、復帰早々で悪いが先頭頼むわ。ルート取りも任せる」

「はい。アスマさん」

 アスマはイルカとカカシがやりあったことも、その事情の大体をも知っているらしい。

 互いに目線で言いたいコトを牽制しあってしまうのは、長年の付き合いのせいだろうか。
 
 それでも結局アスマは何も聞かず、指示を続ける。

「お前らは2人で左右に気ぃ張ってやがれ。オレがケツにつかぁ」

「はい」

「了解しました」

「よし。じゃ、いくぜ」

 アスマの声に、イルカはうなずき、地を蹴った。
 残る者も後に続く。

 目的地までは森を抜け、忍の足で1日半。
 その行程を休みも取らずに踏破する予定だった。

 彼らが通るその森は敵地との境界線上で、休憩をとれる場所はない。
 その代わりに接触なり挑発をし、そのまま要人の影武者を護衛することが彼らの役目だ。

 いわば、囮。

 それを分かっていて、彼らはこの任務についていた。
 実力も経験も、それらに裏打ちされた判断力も、ふさわしいと見込まれて。

 人手不足の今だからこそ、能力のない者の手に余る任務は与えられることはない。
 任務につく忍1人が負うものも大きかった。

 やがて、夕暮れ間近に問題の敵地付近へと近付いた。

「めんどくせえが、少し速度落として気ぃひくぞ」

 アスマの声は低く小さなものだったが、先頭のイルカにも聞こえる。

 それぞれハンドシグナルで後方のアスマへ了解した旨を伝え、足を緩めていく。
 
 
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