カカイル

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─── あなたと、



「いってらっしゃい、イルカ先生」

 自分を送り出してくれる人がいるのは、いつ以来だったろう。

 そんなことを考えながら、イルカはカカシの病室を後にした。

 扉を締めたとたんに全ての気配を消していたのは、忍としての習い性。

 けれど、そのまま動けずにいたのは──離れがたかったのは、自身の気持ちだった。

 これまではアカデミーでも任務でも、送り出す側だったイルカ。
 こうして任務に出るたび、誰かに背を向ける瞬間に、送られる気持ちをも思い知る。

 そして、自分が2つの顔を持って生きていることも。

「それでもオレは、アナタを……」

 弱くなりそうな気持ちを押し切って、立ち去ろうとした耳に優しい声が聞こえた。

「アナタの手を、決して離したりしませんから」

 病室で1人、語りかけるカカシの言葉。
 
 それが誰に向けれられたものか、イルカは分かっている。

「ずっと、繋いでいます」

 その言葉通り、いまだ右腕にはあの時カカシに掴まれた痕があった。

 自身の腕に残されたカカシの思いに唇を寄せて、イルカは心で呟く。

───行ってきます、カカシさん……

 そして顔を上げ、気配も足音も立てずに立ち去った。


 


 任務に着くのだと、思ったとたんにイルカの意識は切り替わる。

 アカデミーのイルカ先生でも、受付の中忍でもなく、一介の忍のそれに。

 集合場所には既に3人の忍が待っていた。
 今回の隊長となる上忍の猿飛アスマと、イルカとも顔見知りの中忍が2人。

「よお、イルカ。遅かったな」

「申し訳ありません。アスマさん」

「ああ、気にすんな」

 カカシに比べりゃ可愛いもんさ。

 そう言ってアスマは盛大に煙を吐き出した。
 まるで、今まで一緒にいたんだろうと言われたようで、一瞬イルカは視線を反らす。

 その一瞬の仕草が、らしくないと自分でも思った。
 更にアスマにも指摘される。
 
「なに照れてやがる。さて、揃ったところででかけるぜ。イルカ、お前が先頭だ」

「……はい」

「で、オマエらは両翼に、オレがケツにつく。で、お前らから言っておきたいことは?」

 部下の顔を見渡すアスマに、イルカが一歩進み出た。

 さっき一瞬見せた表情とは違う、別の意識で動いている。

「よろしいでしょうか?」

「おう、なんだ?」

「……アスマさんは、ご存知かもしれませんが……」

 そう前置いてイルカは続ける。

「私の術の1つが禁術扱いとなってしまって、今回から使うことができません。復帰したばかりですので、とっさの場合判断に時間がかかる可能性があります」

「そうだったなあ……ま、オレはオメエさん実力を買ってんだ。禁術なしでもやれんだろってな」

「はい。ご期待に添えるよう全力を尽くします」

「よし。行こうか」

 アスマの声にうなずき、イルカは地を蹴った。

 向かう先は里の西の小さな集落。
 以前はなかった獣による被害が急増しているため、捕獲と駆除が依頼されていた。

 話によれば、農作物が荒らされるだけでなく、近頃は人に襲い掛かるようになったらしい。
 
 
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