カカイル

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あるいていこう



 イルカが目覚めた時、まだ夜は明けていなかった。

 寝不足ではないが、身体の気だるさには少々まいる。

 寝返りを打とうかと思ったが、しっかりと背後から抱き込まれている上に、狭い1人用の寝台で男2人で寝ている状況では無理そうだった。

 辛うじて動かせる腕で上掛けをずりあげ、カカシの肩まで覆ってやる。

 視線を窓に戻すと、徐々に空が明るさを増していっているのが分かった。

───そういえば、こんな時間だったな……

 イルカは思い返す。

 任務の帰還途中、里の近くでカカシと出会った時のことを。

 あの時、自分を待ち構えているカカシを避けることも、いつも通りのイルカ先生のフリもできた。

 なのに、何故かそうしなかった自分。

 そう、あれは紛れもなく、イルカ自身の選択だった。

 カカシに、何かを期待していたのだろう。
 
 あの日、あの時間にカカシと出会わなければ、カカシがイルカに興味を示さなければ、イルカはいなくなっていただろう。

───きっと、好きだったんだろうな……

 あの朝に見た、朝日に照らされたカカシの髪の輝きが忘れられない。

 まるで、星のない夜に見つけた灯火のようにイルカには思えた。

 ただそんなことは、言ってやるつもりもない。

 これ以上、好きにされたら流石に身体がどうにかなってしまう。

 それでも、自分を抱きこんで幸せそうな寝息を立てる男の腕に触れて、イルカは再び眠りに落ちていった。


 


 耳元で誰かが忍び笑いをしている。
 そんな、あまり愉快ではない目覚め方をした。

 徐々に頭が覚醒してくると、その笑いの主に思い至り、ますます不愉快になっていく。

「イルカせんせ〜ぇ、起きてるんでしょー」

 抱きこまれているせいで、その忍び笑いが直接身体に伝わってくる。

 けれどいつまでもこのままでいるともっと危険な状況に陥りそうだ。
 観念して、できるだけ今目が覚めましたという風に、嫌々ながらイルカは目を開けた。
 
「おっはよーございます イルカせんせ〜

「……オハヨウゴザイマス、カカシサン」

「うっわー、棒読みですねー。でも、そーゆーアナタも可愛いでーす

 上機嫌でそんな頭の悪いことを言って、カカシはイルカを抱きしめる腕を強くする。

「あー、シアワセ〜 目が覚めたら夢でしたーとかだったらどーしよって、思ってたんですよー」

「あの、カカシさん。オレ……シャワー浴びたいんで放してもらえませんか?」

「もちょっとこーしてません?」

「……オレとしてもそうしたいのはヤマヤマですが、そうしていられない状況なんで」

 小声で一気に言ってやれば、カカシから甘えた気配がすぐに消えた。

 抱きこんでくる力も弱くなり、それでも労わるようにイルカに触れてくる。

「あー、スイマセン。身体、大丈夫デスか? 浴室まで運びましょーか?」

「それはいいです。平気ですよ。それに狭いですからね、運んでもらう程じゃありません」

 言い様、イルカは身を起こして裸のまま、浴室へ向かう。
 
 
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