カカイル
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〜 イル誕06 〜「イルカせんせ、26日、里にいます?」
「はい? ええと、帰還予定日が24日ですから、任務によりますね」
早朝、出掛けに戻ったばかりのカカシに呼び止められ、イルカは首を傾げた。
「カカシさん? あの、なにか?」
答えた途端、カカシの眉が不機嫌そうに寄った理由が思い当たらない。
「はあ。やっぱり」
「やっぱりって、なんですか?」
「忘れてるでしょ、イルカ先生。自分の誕生日」
「あ」
言われて、合点がいく。
5月26日は確かにイルカの誕生日だった。
「ま、まあ、この歳ですからね、別にめでたくも……」
「オレにお祝いさせてよ。大事な日なんだからさ」
忘れていた照れくささから、卑下するようなことを言うイルカの言葉を遮ってカカシは真剣な声で訴える。
「イルカ先生が生まれてきた日だよ。しかも、オレたちがおつき合い始めてちゃんとお祝いできる、最初のっ。やっぱり、ちゃんとご両親や育ててくれた3代目に感謝したいじゃないですか」
それに、こんな生き方してんだから、今日まで生きてこれたことを祝ったっていいじゃない。
「あなたが生きてきた年月は、オレにとっても大事な時間なんです」
言いたい事を言い切ったカカシと、その言葉に何も言えなくなったイルカの間に、長い沈黙が横たわる。
けれど、それは不快なものではなく、言葉ではなく見つめ合った目が思いを伝えあっていただけのことだ。
「分かりました。ちゃんと26日までに戻って、その日は任務入れないようにします」
「うん。じゃあ、気をつけてね。行ってらっしゃい、イルカせんせ」
「行ってきます、カカシさん」
そう言って一瞬、口付けを交わす。
イルカは任務で里を出て行く、帰ったばかりのカカシもしばしの休息の後に出て行かねばならなくなるだろう。
それでも、互いにどこかで繋がっていると信じていた。
この先もずっと。
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2006/05/14
UP DATE:2006/06/01(PC)
2009/11/12(mobile)