カカイル
□MISSING LINK
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「アンタもさ、イルカ先生のこと万年中忍って侮ってたデショ」
「いえ、あの……」
口ごもるが、図星だったようだ。
「中忍になって3年って聞いたけど……、じゃあさー」
実際、つい最近までカカシもそう思っていた。
「あと3年同じような任務を続けて、生き延びられる自信ある?」
けれど中忍であることすら──万年と言われる程に長く無事に──生き延びることが困難な生き方を、自分たちがしていると忘れてしまった者が、イルカをそう言うのだ。
「階級と実力は比例しないモンだ。オレたちは、里が使いやすい立場に置かれてるだけなんだし」
だからカカシは6歳で中忍にされ、今は上忍となっている。
「上しか見られないヤツは、下にいた方が使いやすい」
お前は下忍のままだった方が良かったと含ませ、カカシはその男から離れた。
夜の闇に互いの姿が消えていく。
そして、その先をイルカが走っている。
カカシは見えぬイルカの背を思い、追った。
夜が明けきる直前に、カカシの隊も里の周囲を巡り終え、その夜の哨戒は終了した。
愚痴るアスマと、やたらと暑苦しいガイへ報告の義務を押し付け、解散後もカカシとイルカはその場に残る。
約束どおり、話をするために。
他に誰もいなくなるまで待って、カカシはようやく口火を切った。
「ね、イルカ先生は?」
「その前に、よろしいでしょうか?」
「ナニ?」
「……何故、私をうみのイルカだと、認めて下さらないのですか?」
「何故って……」
イルカ先生じゃないから。
言い掛けて、カカシは躊躇した。
どちらが本当のイルカの顔なのかを、カカシは知らない。
けれど今更気付いても、もう遅い。
「……オレの知ってる、イルカ先生じゃーないから、かな」
ぼつりと、正直に答えるしかなかった。
「……あなたも、なんですね……」
「………」
「……あなたも、私が消えればいい、と……」
答えられなくなってしまったカカシに、感情のないイルカの声を受け止めるのは辛い。
「そう、思っていたんですか? カカシさんも」
その言葉にカカシが顔をあげると、もう夜は明けていた。
朝日に照らされて立つのは、あれだけ話し合いたいと思った、うみのイルカ。
それなのにもう、名を呼ぶ以外に、何も言えなくなってしまっていた。
「……イルカ先生……」
「でもね、カカシさん……」
「……イルカ、先生ぇ」
「オレのほうが、消えるんですよ……」
だって、前に言ったでしょう。
「2人目だと……」
「イルカ先生っ!」
諦めたように鮮やかに微笑むイルカを、カカシは抱きしめていた。
「それでも……、それでも、オレはっ!」
「……カカシさん……」
「オレはアナタがっ!」
腕に力を込め、決して逃がさぬようにカカシはイルカを抱きしめる。
「……アナタが、いなくなるのは、ヤです……」
肩口に顔を埋め、耳元に囁くようにこぼれた言葉は涙に濡れていた。
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2004/11/05
UP DATE:2004/11/05(PC)
2009/01/28(mobile)