カカイル

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「全ては九尾の力を暴走させず、且つ無駄にさせたりしない為、ね……」

 だが、それは無駄な努力になると、カカシは思う。

 ナルトがイルカ先生を忘れることなど、決してない。

 それは子供が、愛情を持って接してくれた親の記憶を手放さないのと一緒だ。

 理屈ではない。

 それに今やナルトも、イルカと火影だけが庇護する、九尾の器でもなかった。

 多くの仲間と信頼関係を結び、カカシを始めとする幾人もの理解者や協力者を得てきた。

 まだまだ未熟だが、1歩ずつ着実に立派な木ノ葉の忍に近付いている。

 だが同時に、敵も作ってきた。

 かなりやっかいな者ばかりで、ナルトを憎むイルカを利用しないと限らない。

 それに、もしイルカから完全にイルカ先生としての人格が──ナルトを愛しいと思う気持ちが、失われてしまったら。

 必ず、あの男は木ノ葉の里へ戻ってくる。

 ナルトを殺しに。

───その時、オレはどうする?

 カカシは自身に問う。

 イルカは言った。

 自分を殺してナルトを守れと。

 だが、そんなことはできない。

 イルカが自分を殺そうとする。

 そのイルカをカカシが殺す。
 
 そんな場面に出くわせば、確実にナルトは正気を保てなくなるだろう。

 それは言い訳で、したくないというのがカカシの本音だった。

 今までだって人は何人も殺してきた。

 戦争だ、任務だということが人殺しの言い訳にはならないと分かってもいる。

 けれど望んで、好きで殺してきたのではない。

 死なせるぐらいなら、自分が死んだほうがマシだと思う人間もいるのだ。

───ああ、そうか……

 カカシは自分の思考の正体に気付く。

 ずっと、思っていたのだ。

 その手を、掴んでいたいと。

 共に墜ちてもいいと。

 共に、在りたいと願っていたのに。

───オレがイルカ先生を、死なせたくないんだ……

 命をかけてもいいと思う程に、その存在を望んでいる自分に。

「ホンット、バカ……」

 言葉にすると、あの人の柔らかい笑顔が脳裏に浮かび、苦笑がもれた。

 周囲に潜伏している仲間から、抗議の気配が飛んでくる。

 まだ任務の最中だ。

 だがもうすぐ終わる。

 そうすれば、里へ戻って医療スペシャリストの綱手に相談すればいい。

 精神分裂──多重人格は精神疾患だ。

 何か、まだ手はある。
 
 カカシは自分を納得させ、任務に集中した。

 
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2004/11/08
UP DATE:2004/11/08(PC)
   2009/01/29(mobile)
 
 
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