カカイル
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「……バカ声のどこが癒し系だって?」
「んー、なんて言うか。この里ってそんなカンジだったんですよ」
木ノ葉崩しの前まではね。
「イルカ先生は、木ノ葉の忍にとっちゃ平和の象徴なんでーす」
ホントよ、コレ。
「そーじゃなきゃね。アスマやらイビキやら、その他諸々の皆さんが、オレにイルカ先生情報を流してくれるワケなーいんだもんねー」
「ふん。人徳は火影なみってかー」
「そ。だから、あの人見捨てたら、アナタ就任期間最短の火影になっちゃいそーでーすねー」
面白くもなさそうに言い捨てる綱手に、不穏な台詞を笑顔で吐くカカシ。
「カカシ」
「なんです」
2人の笑顔の応酬に、シズネとトントンは壁にびったりとはりついて涙を流しながら震えた。
「お前の覚悟はできてんのかい?」
「ええ、もちろん」
いざとなれば。
「オレがイルカ先生を止めますよ」
「そうかい」
どうやってとは、カカシは言わず、綱手も聞きはしない。
「じゃ、あたしもその癒し系中忍とじっくり話し合ってみようかねえ」
それを聞き、カカシは火影の執務室を退出した。
「うみのイルカ、入ります」
火影の執務室に入ってきたその男を見て、綱手は嫌な印象を覚えた。
Sランク任務から戻ったばかりだというのに、埃臭くもなく、血にまみれてもいない。
里の外で行動していたのだとわかるのは、サンダルの底に僅かについて泥や木皮ぐらいのものだ。
そしてそれ以上に気に入らないのは、表情。
特に目。
黒々とした瞳と、くっきりとした一重、真っ直ぐな眉。
そのどこにも感情がない。
それでいて何か妄執に捕われた者特有の、ギラついたカンジがするのだ。
まるで、大蛇丸のように……。
「5代目、お話とは?」
「あ、ああ。イルカ、お前暗部への入隊が決まっていたな」
「はい」
「それで長期の里外任務へでる事も」
「ええ」
「その前に、お前に聞きたいことがあってな」
「なんでしょう?」
そこまで一気にやりとりを進めながら、綱手はイルカの表情とチャクラを観察しつづけた。
そして、その名をことさら強調して口にする。
「うずまきナルトのことさ」
その瞬間、イルカの口元にぞっとするような笑みが一瞬浮かび、すぐに消えた。
「……ああ、あの九尾のガキが何か?」
最初から何も変わらぬ平坦な声で、イルカは答えてくる。
「いや、お前が懇意にしていたと聞いたから、少し話を……」
「私が? アイツとですか?」
「違うのかい?」
「冗談はよしてください、火影様。この里で、アイツに関わろうとするバカはいませんよ」
綱手はそこで大きく息を吐いた。
もうこの男の──イルカの顔を見ていることができなくなり、書類の読みすぎで目が疲れたフリをする。
「ああ、悪かったね。私の聞き間違いだったようだ」
いいよ、もう。任務明けに手間掛けさせたね。
「いいえ、こんなことは3代目の頃にはしょっちゅうでしたから」
その声に、綱手は視線を戻す。
先程とは別人としか思えない、愛嬌のある男がそこにいる。
「それでは5代目、失礼します」
ぴょこりと頭を下げ、出て行くイルカの足取りが、先程までとまるで違っていた。
そして、なんの表情も見せていなかった眉根が、きつく寄っていたのも見逃しはしなかった。
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2004/11/09
UP DATE:2004/11/09(PC)
2009/01/29(mobile)