カカイル
□MISSING LINK
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ただ先頭をいくイルカと、後に続く中忍の加減が違った。
予測以上の間隔が開く。
「離れすぎっ……」
アスマが発した警告と同時に、イルカの着地点へ起爆札を巻いたクナイが数本飛んできた。
しかし、そこへ飛び込み四散するイルカは影分身。
本体は爆風に紛れてクナイを投げた敵を倒す。
アスマら木ノ葉の忍3人は爆発跡を迂回して先へ行こうとする。
けれど、簡単には進めない。
《影縫いの術》
無数に、間断なく飛んでくる暗器類は叩き落すことが精一杯で、進むどころではなかった。
足が止まったところへ、敵の影が治まりつつある爆煙から、飛び出してくる。
《火遁・鳳仙火の術》
飛び出してきた敵忍に向かって火遁を放ち、火炎に紛れてイルカが体術で強襲した。
同時にアスマらも動き、敵部隊は瞬く間に殲滅される。
「変わり身かよ……。んとにオメー、基本はソツねえな……」
傷一つなく、炎の向うから姿を現したイルカを確認し、アスマは呆れたように言葉を吐き出した。
「アスマさん、九時方向に1隊潜んでいます。十一時からも2隊来てますが」
「よし、向うはオメーに任せる。オレらは先行して2部隊と当たってっから、追いついてこいや」
「はい」
その返事にアスマらは先へ進む。
イルカも自身の役目を果たすべく、動いた。
アスマとは、公私に渡って10年以上前から交流がある。
そしてイルカの実力をも正しく知り、ゆえに彼をうまく働かせる少ない人間の1人だった。
アスマは決して無茶は言わず、出来るだけのことしか求めない。
だからこそ、彼の下につくものは全力で答えるしかなく、また応えたくなるのだとイルカは思う。
───自分にできること、か……
《影分身の術》
印を組み、イルカは3体の影分身とともに敵へ向かった。
じわりと胸が痛むのをこらえて。
結局、任務はたいした波乱もなく終わった。
当初は影武者を護衛する囮役であったのが、行きに派手にやりすぎて警戒された為に急遽、本物の要人を警護することとなった。
けれどそれは、作戦範囲内の変更で問題はない。
ただ全てが終わって里に帰る途中、イルカは不調をアスマに気付かれた。
「ちょっと休んでくかぁ?」
背後から掛けられた声に答えようとイルカが息を吸うと、違和感を覚えるだけで空気を取り込めない。
胸に感じるのはもはや痛みではなく、熱さと濡れた感触だった。
これまで忍としての速度で森を駆け抜けていたイルカの足が、ぴたりと止まる。
「おい、どうした……イルカっ!?」
アスマや同僚たちに支えられて初めて、イルカは自分がもう一歩も前に進めない状態になっていることを知った。
耳元で誰かが自分を呼んでいるのは分かる。
だが、誰がなんと言ってるのか判別できない。
───死ぬ、かも……
ぼんやりと、思った。
鏡像分身がカカシの雷切を受けて傷を負って以来、傷もないのにイルカの胸地には血が浮き出し続けている。
服に染み出さぬよう、きつくサラシを巻いていたが、影腹を切ったかのように血は止まらなかった。
血を失い過ぎたせいか、視界がどんどん暗くなっていく。
ふと、自分の腕が目に入った。
血の気の失せた腕に、くっきりとカカシの掴んだ手の跡が残っている。
───……カカシ、さん……
会いたいとと思った。
無性に会いたかった。
何故かは分からないが、この気持ちはカカシへの欲求だとさえ思う。
せめて、最期に、もう一度だけでも。
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2004/11/21
UP DATE:2004/11/21(PC)
2009/11/07(mobile)