カカイル

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 写輪眼を使う程の任務ではなかったお陰でチャクラ切れは免れたが、それだって辛うじて里まで体力が持つ程度のこと。

 任務報告書を提出した手で、新たな任務依頼書を掴まされるようなことは、今は避けたいというのが正直な気持ちだった。

「受付さんもバタバタしてるとは言え、もーちょっとなんとかなんないもんかねー」

 これまで任務を割り振ってきた3代目火影がいなくなり、任務受付所は大混乱に陥っている。

 今はベテランの内勤中忍が音頭を取って、新人中忍を切り回しながらなんとか稼動していた。

 まだ任務の割り振りも適材適所とはいかないのが実状で、前の任務から戻ったその足でまた任務に赴かされるのは何度目だっただろうか。

 里の状況はわきまえているつもりだが、流石に疲れている。

 少し休ませろよ、というのが本音だった。

 それでも、上忍師としての任務もちゃんとこなしたいと考えている自分に、カカシは苦笑を漏らす。

 カカシの部下たち3人──いや、彼らだけでなく今年の新人下忍の半数は、木ノ葉崩しに際して下忍らしからぬ働きをした。
 
 あの時はずいぶんと無茶もさせてしまったが、あれだけの戦いを乗り切った今が一番気持ち的にも技術的にも伸びる時期だ。

 ナルトには、自来也がついていてくれている。

 2人は気も合うようだし、なんと言っても自来也はカカシの師である4代目火影を指導した人物だ。
 ナルトの事情を誰よりもわきまえている人だし、間違いはないだろう。

 しかし残る2人、特にサスケには木ノ葉の里ではカカシでしか教えられぬことがある。

 サクラにしても、彼女自身に他の2人と比べて能力不足の自覚があるだけに、今度のことで明らかになった特性を伸ばしてやれる方法を考えねばならない。

 それに、スリーマンセルとして教え導いてやらなければならないことは山積みだ。

 早く帰ってやらなければ、と思う。
 そして1日でも長く、彼らを見守っていたい。

 そう考えて、ずっと心の片隅にひっかかっていた人物の顔が苦笑を伴って浮かんだ。

「……って、オレもイルカ先生のコト言えないよなー」

 中忍選抜試験へ推薦時に、子供たちを案ずるあまり彼らを侮ったままの中忍に強い事を言った。
 
 けれどもし、あのような状況に置かれたら──例えばあの子供たちが自分の手を離れ、上忍となる時がきたら……。

 その時を考えると、カカシは笑うしかない。
 きっと自分もあの中忍のようにするはずだ。

 あれは元教え子を思う者として当然の行動だったと、カカシは理解している。
 あの1件でイルカの心象は良くなりこそすれ、悪くはならなかった。

 そして自分も現担任として──多少の揶揄は含ませはしたが、正しく対応したつもりだ。
 ただ、カカシ自身はあれで良かったと思ってはいても、あちらもそうだとは限らない。

 一度、折りをみて話し合いたかった。

 あの件についてだけでなく、部下たちのことで聞きたいことは多い。

 だがあれ以来、任務受付所でも殆ど顔を合わせることもなくなっていた。
 かと言って、わざわざアカデミーまで会いにいける関係でもない。

 彼が受付所に座っている日と時間に当たることを、願うだけだ。

「今日は、いるかねえ」

 そう呟き、カカシは足を止める。

 振り返らず、背後に迫る気配を探った。

「……敵じゃーない、か……」

 味方だと判断して、カカシは動かずにいる。
 
 
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