カカイル

□MISSING LINK
35ページ/45ページ



LINKAGE

はなさくみち



 任務先から里に戻り、日の陰りだした街をイルカは真っ直ぐに自分の部屋へ向かう。

 とにかく誰か──特にカカシやナルトに会いたくなかった。

 こんな不安定な心理状態で彼らに会ったら、また極端に突出した意識が出てきてしまうかもしれない。
 それが、無害な人格とは言えない以上、出来る限り余計な刺激はうけたくなかった。

 5代目火影の綱手は医療スペシャリストでもある。
 1度相談してみようかと、道々考える。

 しかし、自室へ帰り着いたイルカは、扉を開けた瞬間にある人物の出現を背後に感じた。

 途端にさっきまで会いたくないと思っていた意識が、どこかへいってしまう。

 それすらも無視して、振り返って声を掛けようとしていた。

「おかえりなさい。イルカ先生」

 けれどそれより先に、背負った背嚢ごと、カカシに抱きしめられた。
 
 荷物や装備が邪魔をして振り返ることも、背後をうかがうことも、互いを感じることもできない。

 けれど、腹にまわされたカカシの手に自分の手を重ね、イルカはその人のぬくもりを確かめた。

 彼も任務から戻ったばかりなのだろう。
 泥と汗に汚れた手甲に包まれた手に触れ、その手を力強く握り返され、とても安心した。

 自分がここにいるということを、カカシがここにいるということを、実感する。

「ただいま、もどりました。カカシさんこそ、おかえりなさい。」

「うん。ただーいま、イルカ先生ぇ」

 抱き込む力を強くするカカシに、イルカは苦笑した。

「カカシさん。荷物とか当たって痛くないですか?」

「……うん。全然、気持ちよくないデス」

「手、緩めてください。それに、顔も見せてください」

「はい」

 言うや、イルカの身体と視界はきっちり180度巡ってし、カカシの正面に移動している。

 普通の人間にはありえない速さと、動きだった。

「あ、イルカ先生呆れたデショ? それとも、目回った?」

「……いえ。あまりに見事だったので……」

「嘘。オレは自分で呆れてるんですけーどね」
 
 目の前でえへへとカカシは笑う。

「なんか、一瞬たりともイルカ先生から離れたくないなって思って」

 そんなカカシの口布に覆われた顔に、両手で頬を包み込むように触れて、イルカは改めて無事の帰還を労った。

「おかえりなさい、カカシさん。よくぞご無事で」

「イルカ先生こそ任務、お疲れ様でーした」

 顔が近付いた気がして、イルカはカカシの顔に添えていた手に力を込める。

「イールカ先生ぇ?」

「ドア、閉めてからにしましょう。こういうことは……」

 しかめられていた右目が呆けたように丸く見開かれた。

 軽く肩を押されて、イルカは自ら室内に後ずさり、カカシが後ろ手に閉めるドアを肩越しにみる。
 そして、鍵の掛かる音がした。

「カカシさん」

 イルカの手が、カカシの顔を覆う口布を引き下ろした。

 カカシは両腕でイルカの腰を引き寄せる。

「イルカせんせぇ、目、閉じてよ」

 言われて、そうしたとたんに、唇が触れ合った。

 軽く合わされた唇はすぐに離れたけれど、またすぐに今度は強く吸われる。

 カカシの頬に添えていた左手を肩口から背へ回して、イルカからも強く抱き寄せた。
 
 
次→##
write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ