カカイル
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手から直接、湯飲みを受け取り、カカシはその温みを確認するように両手で抱え持つ。
その姿が妙に幼く見えて、イルカは微笑ましく思いながら、傍らに座った。
「えーと」
「なんでしょう」
熱い茶を吹き冷ましてはすすりながら、ぽつりぽつりと言葉を交わす。
「……ずいぶん、思い切って処分……いや、整理されたんですか?」
未だに視線の向いたままの戸棚のことかとイルカは思った。
「いいえ。もともと必要なものしか持っていなかったので、最初からこんな感じでした」
あー、でも、本はずいぶん処分しました。
「アカデミーの古い教本とかは、図書室や資料室に引き取って貰ったんですよ」
「なんか、も1人分の荷物……入りそうですよね?」
カカシの言葉の意味を悟って、イルカはしばし考える。
それは、この任務に就く前に交わした約束の答え。
どう答えるかは決まっていたけれど、こんなことは考えていなかった。
「……あなたがここで、暮らすつもりですか?」
「オレのトコのがちょっとだけ広いですけど、イルカ先生のトコがいいです」
「ここ、単身者用なんですけど」
「じゃー、2人で暮らせるトコ見つけるまででもいいです」
「……早めに、見つけましょうね」
「はい」
イルカの言葉に、嬉しそうな声が答える。
「カカシさん」
「なんでしょうか、イルカ先生」
「一緒に暮らしましょう」
「はい、喜んで」
カカシが華やかに微笑んで、抱きついてきた。
「花咲きまくりの人生にしましょーうね
イルカせんせ
」
その言葉にうなずいて、イルカはカカシの背を抱き返す。
「イルカ先生、いいの?」
「今更ですよ」
さっきまで2人が手にしていた湯飲みは、いつの間にか机の上に並んで置かれていた。
無駄に上忍の能力を発揮しているカカシに、イルカは苦笑する。
その笑いをこらえるように、汗と埃の匂いがするカカシの肩口に顔を埋めた。
「言ったでしょう。オレも、あなたをこういう意味でも好きだって」
「そーだったね」
イルカと同じように肩口に顔を近づけ、耳元でカカシが囁いた。
「だけど、いつから?」
「あなたが倒れてからずっと、考えたんです」
任務先での私闘に倒れたカカシを背負って里まで走りながら。
眠るカカシを見守りながら。
イルカは自身の想いとカカシが向けてくれた想いに向き合った。
そして答えは、決まったのだ。
任務に出た先でふいにカカシを思った途端に意識が切り替わった時の恐怖は飲み込んで、イルカは告げる。
「あれからずっと、あなたのことを考えていました」
それは、嘘ではない。
「オレはカカシさんが、好きです」
「イルカ先生」
少し身体を離し、顔を見合わせるようにしてからカカシは言う。
「も1度言って、イルカ先生」
「オレはカカシさんが、好きです」
口布にも額宛にも覆い隠されていない、カカシの素顔を真正面から見据えて、イルカは告げた。
「オレもイルカ先生が好きです」
嬉しそうに、カカシの口元が緩んでいる。
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2004/11/23
UP DATE:2004/11/23(PC)
2009/11/07(mobile)
*『
3:ほしのないよる』は性描写のみです。読み飛ばしても、お話の流れには支障ありません。苦手な方は『
4:あるいていこう』へお進みください。
‡蛙娘。@iscreamman‡