カカイル

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「はい。よろしくお願いします、カカシさん」

 カカシにされるがままになりながら答えるイルカの声には、かすかに笑いが含んでいた。

「なーにがオカシイんでーすか?」

「いや、まさか天下のはたけカカシに髪を拭かれるとは思ってなかったので」

「髪ぐらいなんですか。オレは今後イルカ先生にありとあらゆるコトをしますよ!」

「……そう力強く宣言されると、一体何をされるのか不安になりますね……」

 それまで丁寧に髪を拭っていたカカシの手が、タオル越しにイルカを抱きこんできた。

「カカシさん?」

「無理だけは、しないでよね。イルカ先生……」

 カカシは、イルカがワザとふざけた雰囲気にしているのだと思ったらしい。

 そうではないのだと、タオル越しに見つめても、何も伝わらない。
 イルカもカカシを抱き返して、答えた。

「無理はしません」

「今は、へーきですか?」

「ええ。いつもより、すっきりしてるくらいです」

 その言葉にしばしの沈黙が続いた。

 お互いに夕べのコトを思い出してしまったのだろう。

 あわててイルカが弁解する。
 
「あー。それもあるんですけど。でも、なんと言ったらいいのか……今まで意識のどこかにフィルターがかかってたみたいだったのが、クリアになって……」

「それって、切り替わる意識がなくなったってコトですか?」

「え? ……どう、なんでしょう……自分では、よく分かりません」

 言われて、今朝はまだ意識の切り替えが一度もないことに気付く。

 近頃は頻繁に切り替えがあったというのに。

 昨日は、任務中に起こった切り替えに、ひどく不安だったのに。

 カカシと会って、その不安までもがきれいに消えていた。

───カカシさんが、今の要因対象だけど……

 目の前の裸のカカシの胸に、縋るように抱きついてみた。

「イルカせんせぇ?」

 呼ばれて、頭にかけられたままのバスタオルの隙間からカカシを見上げる。

 少し驚いたように、覗き込んでくるその表情に安堵感が広がっていく。

───きっと、大丈夫だ……

 そう思えてくるから、不思議だった。

 自分の気持ちにくすぐったくなり微笑む。

 そんなイルカを見ながら、カカシがぽつりといった。

「なんかイルカせんせい、お嫁さんみたいですー」
 
 頭に被った白いバスタオルに、花嫁のヴェールを見たのだろう。

 そういう見立てをされるのは気恥ずかしかったが、何故か嬉しそうに頬を染めるカカシを可愛いと思った時点で自分の負けだと諦めていた。

「じゃあ、誓いのキスでもしておきましょうか?」

「え? いいんですか?」

 まさかイルカからそんな言葉が聞けるとは思っていなかったのだろう。

 カカシの慌てぶりがおかしくて、わざと拗ねた声をだしてやる。

「嫌ですか?」

「いいえ! 是が非でも、お願いします!」

「はい。こちらこそ末永く、よろしくお願いします」

 寝乱れたままのベッドの上で、裸のままお互い向かい合って頭を下げていた。

 口付けを交わす。

 軽く唇を合わすだけの、けれど今精一杯の思いを込めたキスを。

 そしてどちらともなく、誓った。

「「ずっと一緒に、歩いていきましょう」」

 
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2004/11/25
UP DATE:2004/12/01(PC)
   2009/11/07(mobile)

 
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